史上最強の死にたがり【銀魂】

白夜叉達の救世主06 ページ22

つらつらと自分に挑んだ敵が強くなかったと語り嘆く奴の姿は、この場に居た全員に恐怖を与えたのではなかろうか。

尋常ではない戦闘狂を醸し出す発言もそうだが何よりあの『圧』が悪い意味で効果を発揮していた。







｢おかげで悲しいかな―――死に損なってしまった｣








｢(は…？死に損なった…？)｣
一瞬俺の聞き間違いかと思った。奴の口から出た言葉に違和感を覚え、咄嗟に辺りを見渡す。


天導衆の奴等は、奴が仕掛けた『圧』に手一杯の為に聞いてはいなかったが、


｢……なぁ、今死に損なったって…｣
｢お前もか高杉。俺も確かに聞こえた｣


どうやら少し離れた場所にいたヅラや高杉には奴の言葉が届いており、


｢…先生｣
｢…銀時。貴方も聞こえてましたか｣
｢！｣
｢…どうやら、あの人物は…ただならぬ事情を抱えているようです｣


近くにいた先生も例外ではなかった。あくまで俺だけに聞こえる声で話し、奴の行動を見守る。


俺を含めた四人が四人、奴の言葉の真意を探るも奴自身はそんな気など毛頭ないのか、


｢まぁ、自分の話なんざどうでもいいし、ちとばかし聞きてェ事があったんだよ｣

唐突に話題を変えた。




｢！｣
｢あの男｣
｢｢｢！！｣｣｣
奴が指差した方向は他でもない松陽先生で。



｢こんなに天導衆を集めてよ、そんなにこの男の処刑ってのは大事なもんなのかい｣



本当に、本当に突然すぎた。俺は何だかんだ奴は先生の処刑を長引かせてくれているのではないのかと考えていたが、まさかのいきなし先生の話題をぶっこんだ破天荒ぶりは絶句するしかねえ。

でもそうだ。奴には先生を助ける義理も理由も見当たらねえ。助けてくれる、なんて初対面の奴にそんな―――、


｢あ、ああ。そこの白夜叉に問うたのだ。
その手で師を殺めて生き残る道を選ぶか。
死か仲間か、どちらか好きな方を選べ、とな｣


｢へェ、そいつは凄い。自分達は手を汚さず高みの見物を決め、処刑執行人に選んだのはあろうことか処刑人の門下生で、結局は失うしかない選択肢をあくまで選ばす形で、少年を完膚なきまでに追い詰めるところとかもう！｣


｢……何が言いたい｣
｢いやぁ？清々しいまでの『悪人』っぷりで｣
｢……っ｣
愉しげに口角を上げ長の話を聞いていた奴と、不意に目が合う。


｢っ！｣
顔は相変わらずフードによって作られた影ではっきりしないがチラリと見えた奴の眼は度肝を抜く位にどす黒い。
　

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