始まりは監獄墜落02 ページ2
「ハッ、そんな言い訳。今までお前さんがしてきた問題行動を前にしたら説得力の欠片もねェ」
「…まあ、そりゃそうだ。本音を言えば説得する気なんざ微塵も湧かねェ」
「おい」
鼻で嗤い発言を突き飛ばすが、人物の隠す気すらなかった本音に呆れジト目を送るも、お構いなしに巨塔を見つめなおす人物の姿は全く微動だにしない。
「……なんだ。今日はやけにぶすくれているなお前さん」
その人物の姿を不自然に感じた男が問う。
「……」
「まあ……あれだ。お前さんの御眼鏡に適う奴が居なかったのはいつもの事じゃねェか。今回も死んだ親父さんへの土産話が増えたと思えば…」
最初は疑問に感じた戌威族の男も、恩人の機嫌が悪いのは自分の御眼鏡に適う敵がいなかったからであると考え、機嫌を直そうと今は亡き人物の父親の話題を持ち出せば、
「……今回は」
「なんだ?」
「今回だけは違った」
「…それは、どういう」
人物の想定外の返答に男は固まり、遅れて人物の背中に漂わせていた哀愁に気付く。
気付いて、男は己が発した軽はずみな言動に後悔した。
人間、喜怒哀楽という感情が存在するが、人物はその中で『哀』だけ、公に表現する事は滅多にない。決まって、人物がこうして分かり易く『哀』を見せる理由は、昔も今もただ一人。
―――それは、
「知り合いの情報屋から聞いたのさ。
―――『あの人』がここに運ばれた、ってな」
「…っ!」
人物が吐露した『あの人』という言葉に戌威族の男は案の定これみよがしに顔を歪めた。
「今回の目的の要はそれと言っても過言じゃない。奴に吐かせるだけ吐かした……が、」
嫌な事を思い出したと、人物は奥歯を噛む。
「何ともまあいけ好かねェ面でな、口から出たのは『あの人は他の手に渡った』つう、いけ好かなェ言葉で」
「……」
「今思えば何に対して腹が立ったんだろうなぁ。いけ好かねェ面や発言は勿論、奴が寄越した看守や囚人の力量もだし、奴が『あれ』を使っていたのもだし」
どこかうわ言の様にぶつぶつと呟く姿は誰がどう見ても正常な振る舞いではないのは一目瞭然で。
「……おい」
「……ああ、だが何より―――」
――――――バアンンン!!!!
「っ!?」
何の前触れなく盛大に鳴らした地団駄…という名の破壊音。男は目を見開き人物が鳴らした地団駄を踏んだ地面には、ゆらゆらと白い煙を放ち、月のクレーターに引け劣らない窪みが、深くめり込まれている。
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ハニー - アッこれすき。続き楽しみ過ぎます( ˙-˙ ) (2018年12月4日 11時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)
麗威(プロフ) - 主人公の無敵さ、しかもギャグのセンスもあってある意味最強ですね! (2018年11月22日 18時) (レス) id: ad644a3a0a (このIDを非表示/違反報告)
ねゃむ^._.^(プロフ) - 早く物語の続きが見たいです!! (2018年9月9日 0時) (レス) id: 6a8d27ee1a (このIDを非表示/違反報告)
無気力人間に等しい(プロフ) - ねゃむ^._.^さん» コメントありがとうございます!できるだけ頑張ります! (2018年9月2日 2時) (レス) id: 2e4da08bd8 (このIDを非表示/違反報告)
ねゃむ^._.^(プロフ) - とても面白いです!!ww早く次が見たいので更新お願いします!! (2018年9月2日 1時) (レス) id: 6a8d27ee1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力人間に等しい | 作成日時:2017年7月6日 1時