Zionの花束を17 (ページ8)

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元気で1 ページ8

面会時間が終わり、眼鏡は次なる目的地へ向かった。
仕事、というより、これはお詫び、だ。
事前に連絡はしていたのだが、奏者が一人は死亡、一人は逮捕という事態に至ってしまったため、せっかく用意してもらったコンサートを中止せざるを得なくなってしまった。
職員たちの仕事時間を溝に放ってしまったようなものだ。これはこの企画の主催のようなものである眼鏡自らが直接謝罪しないことには、眼鏡自身もすっきりしない。
というわけで、コンサートホールに来たのだが……
パンパン、と景気よくクラッカーが鳴り、紙吹雪の雨が眼鏡の頭上や肩に舞い落ちる。
「これは、一体……」
「眼鏡さん、よく来てくれました!!」
小肥りが出てくる。これはここだけの話なのだが、職員全体に呼び方改革を行ったのだ。いつまでも眼鏡のことを所長と呼び、現所長である小肥りまでもが眼鏡のことを所長と呼ぶ始末。それでは新たな所長が浮かばれないだろう、とそこだけは手厳しくしたのが、実ったようである。何よりだ。
それはそうと、何故クラッカーを浴びせられたのか。パーティーではあるまいし。
「所長来ない方に賭けてた男子ぃ～、今夜奢りね～」
「うわあ」
「レディたちわかってないなあ。僕らが奢るためにわざと眼鏡さんが来ない方に賭けたんですよ」
「それ言わない方が絶対かっこよかった」
何故か飲み会の話になっている。しかも賭け事紛いのことをしていたらしい。
話がさっぱり見えないが。
小肥りが眼鏡に歩み寄ってくる。
「お詫びコンサートの件でいらしたんですよね。仔細とまでは行きませんが、大まかな状況は把握し、我々も仕方のないことだと思っております。まずは亡くなられた歌手の方のご冥福をお祈り申し上げます」
小肥りに倣い、職員たちが短い黙祷を捧げる。
「それで、急とは思いましたが、コンサートができないまでも、一つ、労いの宴会を、と思いまして」
「労いの宴会?」
立ち話もなんです、と事務所に通される。
事務員が煎れたのはコーヒーだった。芳ばしい香りがふわりと漂う。
「それで、労いの宴会とは?」
「文字通りでございます」
小肥りの説明によると、事前の連絡でもわかっていたが、さすがに殺人事件ともなると報道されるらしく、加害者と被害者が誰かというのはすぐわかったらしい。
お詫びコンサートは職員も気合いを入れていたが故に、そのまま中止にするのは惜しかった。
そこで提案されたのが労いの宴会だという。