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弔いの花言葉5 ページ5

差し出されたZionの花。向けられた言葉の意味がわからず、呆然としていると、眼鏡がよそを向きながら説明する。
「Zionの花言葉だよ。『あなたを忘れない』……墓参り向きの花なのは、この花言葉が墓参りの話からきているかららしい」
「花言葉……」
眼鏡ははあ、と深く息を吐く。
「そうだよ。だから例えば、お前が死んだとして、俺が死ぬまでくらいはまあ、毎日花を手向けてもいいし、杯を掲げに来てもいいって話だ」
何故目を逸らしているのかと思えば、そういうことだったのか。眼鏡はらしくもなく気遣いをしたことに照れているのだ。
「は……」
笑ってやろうと思った。
「はは……」
けれど、顎髭の口から零れてくるのは空笑いだけだ。
「はははは……」
それから、涙。
「何を笑っている」
「ん? いや……やっぱり君は面白い人だなあって思ったのさ」
「そんなに面白い話でもなかったかと思うが」
そういう変なところで生真面目なところとか、わりと面白いと思うんだけど。
顎髭は泣きながら笑った。せめてもの情けなのか、眼鏡は見ないふりをしてくれた。
「ほら、早く菓子供えて黙祷しろよ」
「そうだね」
花束の傍らに菓子の包みを置き、顎髭は目を瞑った。
歌手の女性がZionでかけがえのない存在に出会ったように自分たちの出会いがかけがえのないものだ、と確信しながら。
「近くに休憩用のテラスがなかったか」
「そこで食べよっか」
初めてできた友人というものに、顎髭は感謝した。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:九JACK | 作成日時:2021年2月23日 7時

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