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歌への愛7 ページ15

ピアノソロは先程まで不安いっぱいだったとは窺い知れぬほど、強弱がはっきりしており、そのメリハリで先程の歌手の声の中に込められた熱を受け継いでいた。
ああ、この二人は二人で一つなのだ、と眼鏡は思った。知らない者同士だけれど、ストリートで何気なくセッションをしていたときからそうなのだ。この弾き手でないと歌手は歌えず、この歌手があってこそ、ピアノが引き立つ。互いが互いに必要なものなのだ。きっと、無意識ながらに二人はそれを理解しているのだろう。
「秋に寄り添う花の一片

 風とともに散り逝き、貴方へ届きたい

 ──叶わぬ夢を抱いて、花は枯れ朽ちゆく……」
この演奏をしている瞬間の二人には不安などない。共に演奏し、感情までをも共有している。それを歌手は信じて歌い、その期待にピアニストは応える。
いい二人組だ、と眼鏡は演奏の終わった店内で、自然と称賛の拍手を送っていた。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:九JACK | 作成日時:2019年10月25日 13時

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