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帰宅3 ページ13

妻は何も言わない。差し向かいになったということは言いたいことがあるのだろうが、やはり言わない。
静けさが眼鏡には心地よかった。だから、このまま話が前になんて進まず、二人でこの時間を過ごせてしまえたら、と考えた。
だが、妻がずっと黙っているわけでもなく、口を開いた。
「……夜」
その言葉には反応せざるを得なかった。聡明な妻とはいえ、気づかれているであろうと予測して呑気に構えているのと、実際に口にされるのでは大違いだ。
「仕事なんて早く終わらせて、さっさと帰ってきなさい」
言いたいことはそれだけだったのか、グラスを干すと、妻は寝室に戻った。
仕事を早く終わらせて、さっさと帰ってくる。それは不可能ではない。
だが、眼鏡にも付き合いがある。そんなことは妻も百も承知だろう。だが、妻は夫の遅帰りを全く気にしているわけではなかった。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:九JACK | 作成日時:2019年6月16日 2時

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