いつか私のところに戻ってくれば良いだなんて

11話 ページ12

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「どうかしたの？何か良いことあった？」

人当たりの良い自然な笑顔で毛利蘭が話しかけてきた。私の笑顔とは違う本物の笑顔。私が1人で声を出して笑ったことにに気がついたんだろう。手元のスマートフォンを覗き込もうとしていたからさり気なく伏せる。何故だか見せる気にはなれなかった。見せたところで何が起こるわけでもないのに何か、何かが私をそうさせた。

高校2年生になった時、私は主人公達と同じクラスになった。と言っても主人公はいないし、それでも必要最低限のみ話すだけで特に関わることなく過ごしていた。今回だってそうだ。

『ううん、面白い動画を見つけただけ。それより昨日のテレビ見た？』

自分のことは嘘で隠して、地味すぎないよう注意していかにも女子高生らしい会話を始める。地味すぎては逆に印象に残るから、カメレオンのように周りの中で1番多い何かになりきる。それが学校では普通というものに当たる。私はこの生活を随分と続けているからもう慣れっこだ。

明日からは待ちに待った春休みだ。長期休暇が至福の楽しみと言っても過言ではない私にとって冬休みが明けた瞬間から楽しみにしていたイベントでもある。

だが家へとルンルン気分で向かう私に最悪の悲劇が訪れた。

「お姉さーん！！これ落としたよぉ？」

聞き覚えのある猫撫で声が耳をかすめる。でも聞いたことがあるのは前世であって今世で聞くのはこれが初めてだったりする。だから気のせいだと足をとめずに歩き続けた。だが後ろから迫る軽い足音と制服のスカートの裾を引っ張られる感覚で私の努力虚しく後ろを振り向かざるをえなかった。どうしたの？と言ったふうに笑顔を貼り付ける。

「これ、お姉さんのでしょ？さっき落としてったよ？」

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