二話 ページ3
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「それでエノリア、お前は今何をやってる!?」
「山菜採りだけど。」
「だから俺の家に来いって言ってるだろ!」
口うるさいようですが、毎日のことなので、エノリアはすっかり慣れてしまいました。
今日もいつものように森へ出掛けていると、セドリックが急いで駆け付けてきたのです。過保護ですね。
「何をそんなに怖がってるの、セディ。昔から、あそこで一緒に遊んでたでしょ。平気だったじゃない」
「……、それは……」
口を噤んで、目を泳がせるセドリックに、エノリアは妙な予感がしました。
セディのくせに、私に隠し事をしてる。
生意気。
エノリアは手のひらを握って、セドリックの額にぶつけました。こつん、と音のない衝撃が襲います。
「あだっ」
「ばーか。セディなんて知らない」
「待てって、エノリア!」
背中を向けるエノリアに、恐怖心が巣食ったセドリックは、細い手首を掴んで引き留めました。
見上げると、バツの悪そうな顔をしたセドリックが居ます。
「わかったよ。誰にも言うなよな。母さんから聞いた話だけど」
「うん」
「………。」
神妙な顔をして話し出すセドリックですが、それとは裏腹に、エノリアはどんどんおかしい気分になっていきました。
そして、ついに口元に手を当てて笑みを溢してしまいます。
「セディ、まだそんな話信じてたの。『悪魔の館』なんて。」
「ほ、本当だって! なぁエノリア、行くな、そんな所にお前が行ったら」
「大丈夫だよ。私を誰だと思ってるの。」
エノリアは力をこぶを見せつけて、にっこり笑います。
セドリックは未だ憂いた表情でした。
「……馬鹿言うなよ。お前に万が一の事があったら、俺は」
「セディ。腕、いつまで掴んでるの」
「おわっ!? あ、す、すまん……」
ぎゅううと縋るように握られたセディの余韻が、エノリアの白い手首に赤く残っていました。
怒涛の勢いで謝るセドリックの声を聞きながら、エノリアはどこか満足そうです。
「じゃあ、行くね。またあとで」
「待てって……! 俺も着いてく。俺がお前を守ってやるから」
「ばーか。」
エノリアはもう一度そう言って、今度は頭をわしわしとこねくり回しました。
「あんたは家の手伝い。ね」
「ダメだ……エノリア、嫌な予感がするんだ。だから、」
「百年早い」
うししと笑って、エノリアは去っていきました。
これが、本当に今生の別れとなるとも知らずに……
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ゆめ。(プロフ) - 魚骨さん» 宣伝!!!!!?宜しいんですか!!?ってもう数ヶ月の前の話でスミマセン……スミマセン……もし久しぶりにこれを見に来てくださっていたならぜひ……!めちゃくちゃ嬉しいですありがとうございます!!これから投稿していきたい所存です!!! (2月14日 19時) (レス) id: deb4b2fb78 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ。(プロフ) - 魚骨さん» ぎゃあああああ原作者様ぁあああ!!!!?しばらく諸事情で低浮上しててすみませんでしたぁぁあ!!めちゃくちゃすぐ見に来てくださっていたのに見れてなかったぁぁあ!!! (2月14日 19時) (レス) @page4 id: deb4b2fb78 (このIDを非表示/違反報告)
魚骨(プロフ) - この度は素敵な作品をありがとうございます…!更新楽しみにしています|ू´꒳`)それと、ゆめ。さんが良ければなんですが、こちらの作品をイラスト集の方で宣伝とか…させていただいてもよろしいでしょうか…?全人類に見てほしい…😭(連投すみません汗) (12月29日 22時) (レス) id: 61d723e164 (このIDを非表示/違反報告)
魚骨(プロフ) - エリノアちゃんもセドリックくんも魅力的にえがいてくれてありがとうございます…幼馴染節バリバリ感じれて良い…( * ꒦ິ꒳꒦ີ人(リスのくだり好きです😂)これは他の子たちも楽しみですね…(図々しい) (12月29日 22時) (レス) id: 61d723e164 (このIDを非表示/違反報告)
魚骨(プロフ) - わああああああありがとうございますありがとうございます!!😭🙏うちの子が喋っとる!!!やり取りが可愛い!!嬉しすぎて小躍りししながら読ませていただきました…!! (12月29日 22時) (レス) id: 61d723e164 (このIDを非表示/違反報告)
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