・ ページ4
．
「……どういうつもり」
「どういうつもりもなにも、俺はお前のために頑張ったってことでええやろ？ なんでそんな真っ青になっとるん？」
「……ロボロくん、だめだよ、なにしてるの、それは、だめだよ。なんで、」
「Aが悪いんやで。隠すから。俺ならいくらだって助けてやれたんに、二年も秘密にするから。俺はAのことこんなに大好きやのに……それをわかってもらお思ただけですよ？」
にっこり、そう笑ったAの大事な幼馴染は、いつもの顔で笑っている。
優しい幼馴染だった。年上で、けれどそこまで大きくない身長で、それ以上に男らしい人。そんなロボロのことが大好きで、ロボロくんロボロくんと後ろをついて回っていた。それは高校生というモラトリアム期間の最後の手段においても変わりやしなくて、変わらないからこそ、自分がスクールカースト最底辺であることを言わなかった。言わないまま卒業してしまえばいいと。そう思っていたから。
なのに、なのに。
「……ヤクやったやつがいじめをしてたなんて、よくある話やろ？ なんでそんなショック受けとるん？」
――心配せんでも、Aには迷惑かけへんし。なぁんも心配せんでええよ。ロボロお兄ちゃんが楽園みたいなところいかしたるから、そこでまっとき。終わった時には、もうAを害するものは無くなっとるから。
「返事は？」
そうやって笑うロボロに、何を言えばよかったのだろう。ロボロがいう楽園のようなところというのは、きっと地獄で。そこではAのせいで死んだ数々のクラスメイトが手を伸ばして恨み言を呟いているのだろう。何が、楽園。地獄行きの片道切符だった。
それでも、待っていると答えるしかなかった。
【シャングリラ(楽園)で待ってる】
憂鬱だった朝は、やっぱり明日からも憂鬱そうで、泣きたくなった。それを嬉しそうだと誤認するこの幼馴染にも、何を言えばいいかわからなくなってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
