【狗巻棘】ずるい私とずるい君 (ページ4)

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きページ4

「…ごめんね、私棘くんから口で返事をもらえないことをいいことにさ」

だけどやっぱり、君と今の距離からどんどん離れていくのは嫌だ。私はどこまでも子供だ。彼の気持ちも知らずに、自分のことだけ考えて。

それなら、これからは真っ当ないい子を振る舞うから。
もう、君の懐に入りたいなんて思わないから。君の中での大きな存在になりたいなんて、考えないから。
あわよくば君と恋人になれたら。…なんて邪な気持ちは捨てるから。

「おかか？」

私が唇を噛んで、俯いているとぽんぽんと肩を叩かれる。
顔を上げれば『何言ってるの』とでも言いたげに、むすっとした表情を浮かべている棘くん。

今度はそれに私が驚く。
…だって引くでしょう？
自分の苦労している性質を良いように使って、心情をぶちまけてくる女なんて。

私はしかめっ面の棘くんに、「勝手に好きでいるだけにするよ、許してね」と笑う。

笑ったつもりの私の口角は震えている。自分でも上手く笑えていないことくらい、分かる。
…だってさあ、怖いじゃん。君の中での私は、今私のせいでどんどん汚れていくんだから。これ以上選択を間違えたくないよ。でも私はやっぱり、そういう類の人間みたいで。

――君に想われなくていいから、眺めるくらい

なんて、思ってしまうんだ。