零の贖【地縛少年花子くん】 (ページ6)

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花子くん side.

「はーなこくんっ」

「花子！」

そんなヤシロと少年の声が聞こえてきて、後ろから驚かせようと空気を吸い込む。

しかし声を出す為の空気は、黒髪の少女の姿によって意味が無くなった。

げ、という音が無意識に出そうになるが飲み込む。

「……なんで居るの。」

聞こえていた筈なのに、彼女は振り向きもしない。

代わりに、俺の声に気付いたヤシロが笑顔を向けてきて

その後に彼女も、ちらりと俺を見た。

「あ、花子くん！今日ね友達を連れて来たんだけど……。」

「降世A、って言うらしいぜ」

思わぬ所で彼女の名前を知る。

そう言えば俺、知らなかったなと今更気付いた。

彼女は一体何を考えているのか。

友達が欲しかっただなんて、零番に限ってそんな事は無いだろうし。

分からなくて、怪訝な顔で見つめてみる。

それにも気付かないフリをされたので、少し棘のある声を出してみた。

「零番、目的は何？」

「え？零番って？花子くんAちゃんの事知ってるってこと？」

「知ってるも何も……。」

七不思議の最上位の人だよ。

その言葉は口にしない。

「ってことはAちゃん、花子くんの事見えるの？」

「うーん……。」

昨日の夜会ったでしょ。
何をそんなに悩むことがあるんだ。

思うだけで何もしない。

零番は斜め上に視線を移し、見たこともない笑顔でこう言い放った。

「見えないかな。」

「え。」

「ウソだから、ヤシロ。」

「花子、お前まさか新手のナンパだな！」

「だからウソだって、少年！」

すぐさま武器を構えてきた少年から離れる。

ナンパでもいきなり"零番"なんて呼んだりしないでしょ、普通。

喚いている少年を他所に、零番に目を遣ると
手を口元に当てて笑っているのが見えて
少し頬が引きつる。

ホントに何しに来たんだよ。