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宿泊学習 -境界- ページ30

「くっそ…。痛いな。」



じわじわと熱が集まる腕を力一杯押さえて止血する。

厄介だな。
怪異が次から次へと湧いてくる。

その痛みに顔を歪めていると、
壁に手を添わせている探し人の姿を見付けた。

赤い掌を背中に隠して近付く。



「待ってたよ、源輝。」


「……何だ君か。」


「来てくれるって、思ってた。」


「…そう。」



なんだか曖昧な返事をしたと思ったら
その目線は私の右腕にあった。

まぁ、隠せる訳が無いか。



「随分とボロボロみたいだけど…、どうしたの?」


「…七不思議に空席が出来た所為で怪異がうじゃうじゃ居るの。

そいつ等が何故か襲ってきた。」


「成る程ね…。」



小さく頷いて納得する輝。
まだ私の体から目を逸らさない彼に
そんな事より、と本題を提示しようとするも

不意に合う目と、伸びてきた手に
憚られた。



「な、なに?」


「…怪異にも痛みがあったり血が流れたりするのって、なんだか不思議だよね。」



つー、と私の輪郭に合わせて指先で撫でられる。

片仮名じゃなくて、平仮名じゃないと表せない様な優しい手つき。

頬に手を添えて、じっと見つめてくるから
否が応でも、それに合わせてしまう。

すると突然に、グッと親指に力を入れ拭う様な動きをして。



「いっ…!」


「ははっ、痛い?」


「…痛いよ。」



なんなの、この人。

怪訝な顔で、離れていく手を見ると
そこには赤色が付いていた。

それによって頬に怪我をしていたのだと気付く。



「怪異でも一応女の子なんだから、顔に傷を付けない様にしないと。」


「一応、は余計だと思うんだけど。」



というか、度々刄を向けてくる奴が言う言葉じゃないよね。

なんて口にしたら、また剣を取り出すだろうから止めておく。


ちらりと彼を見ると、和かく微笑んでいて。

少し顔が熱くなるのを感じて、ぷいっと背けた。

それと同時に持ち上げられる右腕。



「応急措置だけど…。」


「汚れちゃうけどいいの?」


「大丈夫。」


「…ありがとう。」


「いいえ。」



傷を覆う様にハンカチを巻いてくれる。

ここまで優しいと、何か裏があるのかなと疑ってしまうな。

そう考えながら、輝の手つきを見つめていた。





「痛!ちょ、絞めすぎ絞めすぎ!」


「あはは。」


「私が痛がってるの見て楽しんでるでしょ、この糞野郎。」


「……。」


「ごめんなさいごめんなさい!ぎちぎちいってるって!」

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作者名:透空 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月3日 0時

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