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気付いたら、走り出していた。
呼び止める声も聞かずに、ただ無我夢中で脚を動かす。

なんでどうして。
どうしてこうなったの。

鮮明に脳裏に残っている事実は
砕いても砕いても、飲み下せなかった。

ひとつ、分かるとするならば。



「私、が殺したんだ。」



言葉にした途端、息が出来なくなって立ち止まる。

いつの間にか大通に居たけれど、今はそれどころじゃ無い。
上手く息が吸えなくて、よろめいた。

通りすがりの人達は、変な物でも見るかの様に目を鋭くさせる。

怖かった、人の目が。
私のした事が全部透けて見える気がして。
裏切り者。人殺し。
そんな声が聞こえてくる気がして。


私が殺した訳じゃないと言う人も居るだろう。
実際には手をかけていないと。
それでも確実に、彼女の背中を押したのは私の言葉だ。
直接的にではなく、間接的に私は彼女を殺したのだ。

まだ呼吸が荒いけれど、それらから逃れる為にまた走り出す。

よろよろと揺れる身体を動かして。

必死だった。
周りなんて見えなくて、ただ自分の事しか考えられなかった。

だから、横から近付いてくるトラックにも気付かなくて。


鳴り響くクラクション。

状況を理解した時にはもう遅い。

痛みすら感じなかったけれど、
あぁ、これは罰なんだ。
と受け入れられた。

自業自得だ、こんなの。
守れなかったのだから。
人を、親友を殺したのだから。


最後に見た世界は、
トラックの光と瞼が造り出す
明暗のコントラストだった。

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作者名:透空 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月3日 0時

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