検索窓
今日:4 hit、昨日:18 hit、合計:14,039 hit

アマルティアの反芻 ページ17

それは、クラスの中で中心的な女の子の一言から始まった。



「結奈って、なんかウザくない?」



放課後、クラスメイトの女子が集まって雑談をするのがお決まりで
輪の中に親友を探していた時に聞こえた言葉。

含みのある笑顔で、さらりと言ったその子に
周りの女子は賛同の声を上げる。



「確かにー!なんか喋り方が癪に障る。」


「私も前から思ってたんだよねー。」



探していた人への悪口がどんどん膨らんでいくのを、何もせずにただ聞く。
だから、今日は結奈居ないんだ。
そんな風に納得して。

仲が良い人の前でよく言えるな、と傍観していると
話の中心になっていた子が、面白そうな目を向けてきた。



「ね、降世もそう思うでしょ?」


「えっ。」



いきなり自分に目線が降りかかって、声が裏返る。

目の前には有無を言わせない笑顔。
否定なんていう選択肢は無い。

けれども、親友とまで言える彼女の事を悪く言うのは躊躇った。
どうしようかと口篭っていると、それなりに交流がある友人が助け船を出してくれて。
切り替わった話題に安堵した。

が、何とかなったと思ったのも束の間
翌朝、絶句する事になる。

結奈の机の上には、ブスやらクズやら
盛大な悪口が書き込まれていた。

それを見つめる親友。
教室の隅で笑みを浮かべる昨日の集団。
彼女と仲の良かった子たちは、気まずそうに目を逸らす。

餓鬼かよと今では吐き捨てられるが、当時はそんな言葉で片付けられなかった。

私は鞄の紐を握りしめて、結奈に駆け寄る。



「だ、大丈夫?」


「あ、A…。うん、大丈夫。」



眉を下げて、弱々しく笑う彼女。
それから目線をずらすと、あの集団が気にくわない顔をして此方を見ていた。

大丈夫、大丈夫。
あの人達だって、何日か経てば飽きるはず。

この時はそう思って、アルコールで何とか机の文字を消した。

でもそれとは反対に
彼女等の遊びは日に日にヒートアップしていき、やがて虐めへと変貌していった。

そういう時の団結は暗黙の了解で絶対だから、結奈に近付く人は誰ひとりと居なくて。

どんどん孤立していく彼女に、私だけは側に居ようと一緒に行動していたが
それすらも邪魔される。



「A。一緒に…」


「降世はうちらと行くんだよねー?」


「えっ…と。」



返答も待たずに引き連れて行く主犯の奴等は、かなり強引だ。
だからこそ、誰も逆らえない。

気付けば私も、その一人になっていた。


もう少し自分が強かったら、と後悔しない時は無い。

そうしたらきっと、

貴方を守れていたのに。

×→←×



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
40人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:透空 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月3日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。