【名探偵コナン】ポアロマスターの代理です。2

34.らしくないコンビ ページ2

自室でスタンドライトを灯し
本を読んでいた私は玄関の気配で
零が帰ってきたのだろうと思った。
疲れているであろう彼に
茶でも煎れてやろうと出迎えに行ったが
目に飛び込んできたのは
白いシャツが赤黒く染まっている光景。

特に致命傷でもない怪我に
私は過剰に反応していただろう。
昨日見た夢…タイムリー過ぎるんだよ。


『応急処置だからね、ちゃんと診てもらって。
後…さっきはちょっと慌ててごめんね…』

降｢いや…いいんだ、助かったよ。
それより………｣


零の手が頬を撫でる。


降｢何故そんなにも泣きそうな顔をする…？｣

『……ちょっと動揺しただけだよ。』

降｢お前、朝から少しおかしいぞ…？｣


そうか…そうだよね…自分でも分かってた。
らしくないのなんて分かってる…
心臓がバクバクと嫌な音を立てる。
次第に視界は歪み始める。


『そう、だよね…うん。ごめ…んね…っ』

降｢律……？｣



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



零side.


突然、大粒の涙を流し始める律。
その顔は俯いていてよく見えないが
彼女は小さく震えていた。

俺はどうしてもその理由が
知りたくなってしまった。


降｢律、俺には話せない事か…？｣

『……………』


ふるふると首を横に振る彼女。
彼女はポツリと話し始めた…


『私にはね、ひとつ上の兄貴が居たんだよ。
でも5年前に死んじゃった…
警察だったの。』


どうやら爆弾処理班だったそうで
爆発に巻き込まれ亡くなったらしい。
それからも律は話を続けてくれた。

父親も警察だったと…
潜入捜査で大きな組織と関わり
律が幼い頃に命を落としたそうだ。
それに続くように母親も事故で…

律が俺や松田達を助けられたら
と言った意味が今ようやく分かった。
きっと自分の家族と俺等を
重ねてしまったのだろう…

雨の日のドライブだってそうだ。
彼女は"哀愁に包まれながら"と言った。
家族の死を伝える連絡は
全て雨の日だったらしい。


『だから零を見た時…怖かったんだよ…
冷静に考えたらそこまでの怪我じゃないのにね…』


涙は止まっているが
眉を下げて力なく笑う彼女が
とても小さく見えた。
普段太陽の様に笑い、
太く伸びた幹の様に逞しい姿は
少なくとも今は感じられなかった。

どうしてあれだけ律の事が
胸につっかえていたのか。
やっと心の靄が晴れた気がする。
俺は彼女が…

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