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No.7:童磨の恋 ページ7

童磨は恋をしていた。


理屈だらけで、鬼として生きる意味も見いだせない、どうしようもないAに。




今から2年くらい前の事だったと思う。

最初は無惨に鬼にされても尚、人間としての正気を保つ特異体質の少女としてAに興味を持ち、近づいた。


童磨はいつも通り、親しげに少女に話しかけてみた。

綺麗な子だなぁ。
どんな子だろう、と期待を持って。



『…黙って。私は鬼も人も信じない』


しかし、少女の目は鮮やかで吸い込まれそうなほど綺麗な赤色なのに、その目は死んでいた。


その少女は、自分には生きる価値がないと言う。
さっさと死んで罪滅ぼしをしたいと言う。そのために、自分は自分を殺してくれる人を求めていると。


嗚呼、なんて可哀想な子だと童磨は思った。

俺がこの子を食って救ってあげねばとも思った。




しかし皮肉なことに、Aは無惨に溺愛されており、簡単には死ねないようになっていた。

具体的に言えば、Aの首筋に歯を立てた瞬間、童磨の口から上が血飛沫を上げながら吹っ飛ばされた。

怯えるAを宥めながら、童磨は冷静に無惨の仕業だと悟った。



無惨に大量の血を毎晩注ぎ込まれ、上弦の鬼並の生命力を身に付けてしまう。


外で『無惨の名前を出すと死ぬ』呪いは付けられておらず、その代わりにA以外の鬼に、Aを殺そうとすれば身を滅ぼしてしまう呪いを、無惨はかけた。



つまりAは自害できない。

死にたくてたまらない少女は、唯一自分を殺せる権限を持った無惨にしがみついていくしか道はない。




可哀想に。

運命に、自分の意思にも無視されてしまって、本当に君は可哀想だ。



だから童磨は、ある日Aに外に行ってみるように提案した。


君が脱走したことを知ると、無惨様は怒って君を殺してしまうかもしれないと。

あの御方は自分の思うままにいかないことを嫌われるから。



それはAにとってひどく魅力的な誘いだった。

彼女は死を望んでいる。こんな場所にいても彼女の求めている死は無惨が少女を飽きるまでやってこない。


だからその日、Aは無限城を出た。



しかし、簡単に無惨に見つけられ、童磨は両眼を抉られただけで、Aにはお咎めなしだった。



悪いことをしても殺されず、誰にも必要とされず、生き永らえる。

少女にとって、きっとこれは拷問よりも苦しいものだった。

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作成日時:2020年1月23日 15時

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