No.15:一閃 ページ16
「……雷の呼吸、」
善逸の周りを纏う雰囲気が変わった、とAはすぐに気づいた。
そうとは知らずに鬼は一斉に襲いかかり_
鬼たちは一筋の光に弾かれた。
鬼は気づかない。
先程まであんなに怯えていた一人の少年が全ての攻撃を塞いだことに気づかない。
それから善逸は、独特な構えをした。
姿勢を低くし、刀はいつでも抜けるように手を添えて。
呟くように、しかし確かに聞こえる声で。
「…雷の呼吸 壱ノ型_霹靂一閃」
それからは目に止まらぬ速さで3匹の鬼の頸を斬っていた。
Aは唖然とする。
本当にあれが善逸なのかと目を疑った。
まるで別人のような技だった。
『(……すごい)』
光のように瞬時に移動し、まるで雷が通り過ぎたかのような素晴らしい呼吸を使った善逸に目を奪われる。
先程までの『善逸は大丈夫だろうか』という心配はみるみるうちに消えていく。
『あ、気絶したままだったんだ…』
木から降りて善逸に近寄り、倒れそうになった善逸の頭を太腿で支えると、彼は眠っていた。
つまりあの呼吸は気絶したまま使ったのだろう。
Aは今までの緊張が解け、ほっとしたように笑い、いまだ眠っている善逸の頬を撫でる。
『…ちょっと心配だったから来ちゃったの。
でも大丈夫そうだね。きっと善逸くんなら、乗り越えられるよね』
きっとこの声は善逸に聞こえることはないけれど、それでも神様に祈るようにAは呟いた。
『…どうか善逸くんが無事に乗り切れように』
そしてAはその場を後にした。
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作成日時:2020年1月23日 15時