No.5:つまらない少女 ページ5
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鬼が棲う無限城へと辿り着く。
外は既に朝日が射そうとしていた。
本当に危ないところだった。
もう少し遅ければ灰になっていた。
善逸くんに向けていた笑顔は消え失せ、何の感情も見せない、つまらないいつもの私に戻る。
善逸くんが見たら失望するだろうか。
彼に嫌われるのは嫌だな…
無限城に入ると一人の美しい男が待ち伏せしているのがわかる。
特徴的な帽子を被り、金髪で虹色の瞳には『上弦 弐』と刻まれている。
手には煌びやかな金の扇子を持っている。
そんな異色な格好をした男は、にこにこ気持ち悪いくらいの笑顔でこちらに笑いかけた。
上弦の弐、童磨という男。
「やあ、Aちゃん!おかえり!!好きな男の子と会うのは楽しかったかい?」
『誤解を招く言い方をしないでください。私が会ったのは鬼殺隊員の一人です。それ以外にありません』
この人と話すと自然と突き放す言い方になる。
…私はこの男が苦手だ。
一見表情豊かに見えるこの男の感情は、何もかも虚像だから。
彼がどれだけ親しげに話しかけても。本当におかしそうに笑っても。慈愛に満ちた人物を装っても。
それは偽りで、本当の彼はからっぽで何にもなくて、ただ人間を機械的に演じてみせているだけ。
私と似ていて、本当に嫌いだ。
そんな私の気持ちも知らずに目の前の男は続ける。
「それにしても興味があるなぁ。生きることにも興味を示さなかった君が唯一愛着が湧いた相手をさ。
どんな子?可愛い?1回だけでいいから、会わせてよ」
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作成日時:2020年1月23日 15時