No.20: ページ21
生きてて良かった。
すぐに死んでしまうかもしれない世界だけど。
おまけにAちゃんはあと少しで完全な鬼になってしまう世界だけど。
それでもこの世界には愛おしくてたまらない人がいる。
絶対に守りたい、と思う子がすぐ傍にいる。
こんな幸せが長く続かない世界だから今伝えるべきだ、と思った。
ずっと今まで言いたくて、それでも言えなかったこと。
「……Aちゃん」
抱擁を止め、彼女の両肩に手を添える。
すると彼女はこちらを見据える。
赤い果実のように鮮やかな赤色の瞳と目が合う。
愛おしい目で、優しく微笑んでくれるAちゃん。
すぐ照れて、拗ねた素振りを見せるAちゃん。
俺が弱いって知っていても、それでも信じてくれるAちゃん。
数えだしたらキリがない。
全部、大好きだ。
俺はAちゃんがいつか鬼になっても、一生君を愛すると誓うよ。
「俺は、Aちゃんの事が好きです。ずっと一緒に…っ…いたいです」
情けないけど、声が震えた。
「俺はこれから鬼殺隊に入って、此処を離れなきゃいけなくなるかもしれない。
だから、Aちゃんさえよければ、着いてきてほしいんだ。俺、弱いけど、Aちゃんを守るために頑張るから」
彼女の瞳が大きく揺れた。
自分の心音は地響きみたいに大きく響いて、彼女にまで聞こえてしまうのではないか、と恥じる。
風の音や彼女の鼓動でさえ、もう聞こえない。
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作成日時:2020年1月23日 15時