岐 ページ2
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おじさんはわたしを背負って、そう言った。
「A、目を瞑っていなさい。」
〔…なんで?どうして、目を瞑るの。〕
おじさんからは、いつもやさしい音がする。
なのに、今日は怒っている音が聞こえる。
「いいから、ほら。」
〔うん。わかったよ。瞑った。〕
おじさんは、家の扉を開けた。
すると、血の匂いとかなしい音がした。
さっきよりも濃く、大きく。
「いいかい、A。」
「今から、おじさんの言うことを聞いて。」
「きみの、おかあさんと、おとうさん…」
「双子の妹、弟は。」
「鬼に、…鬼に喰べられてしまった。」
〔うそだ。そんなのうそだもん。〕
「…嘘じゃないんだ。嘘じゃないんだよ。」
〔やだ、やだ。そんなの嫌だ。〕
〔ねえ、どうして。〕
〔Aが約束、破ったから?〕
〔はやく、おうちに帰らなかったから?〕
〔ごめんなさい。〕
泣きじゃくった。
おじさんの着物は涙でぐしゃぐしゃだった。
そのまま、わたしはおじさんに引き取られた。
それは、5歳の時であった。
それから時は経ち、私は13になった。
おじさんは“鬼狩り”、鬼殺隊の元柱だった。
そして、鬼殺隊史上最強と呼ばれる人だ。
そのおじさんに育てられた私は、13で鬼殺隊に入り、柱に昇格するのもそう長くは掛からなかった。
わたしは、他の人とは少し違っていた。
色々な種類の型が使えた。
水、炎、岩、風、雷、蛇、花、蟲、恋、霞、獣、音、日、など。自由自在に使えた。
独自の型もあった、華の呼吸だ。
鬼殺隊に入り、何体もの鬼を倒した。
その最期は、いつも悲しくて辛かった。
ひどくつらい、かなしいにおいと音がしたから。
だから、わたしはおじさんが亡くなったとき、心に決めたことがある。もう大切なものは作らない、と。
守るものがあればあるほど、人は弱くなる。
それは決して悪いことではない。
だけど、私は鬼殺隊の柱だ。
守るべきは、この世の平和のみ。
それだけで十分だ。
おじさんは最後に言った。
「大きくなったな、A。」
「後は、頼むぞ。」
大きくてあたたかい、おじさんの手。
だから、私は。
私は、鬼殺隊として鬼を斬る。
それだけ。
アイツを倒して、おしまいにする。
鬼のいる世界なんて、早く消えてしまえ。
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夢世_yumese_(プロフ) - オリジナルフラグ外しましょう! 違反報告される場合があります。 (2020年2月10日 16時) (レス) id: 093bdce514 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:和 | 作成日時:2020年2月10日 0時