期待 ページ40
「手、冷たい…」
「…渡辺くんだって冷たいよ」
握られた手から感じる冷えた指先はやがて熱を帯びて身体が熱くなる。
なにこれ。渡辺くんは何を考えているの？
私たちは何をしているの？
こんなの初めてでどうしたらいいかわからない。
「柿崎さん」
「…ん？」
「…おれ、柿崎さんのこと…」
渡辺くんが何か言おうとした。
その瞬間。
近くから騒がしい声が聞こえてきた。
え、なに？
見渡すと若めの男女が10人くらいこちらに向かってきている。
多分人通りの多い大通りから来たのかも。
「…同級生たち？」
「いや、ドレスとか着てないから違うかも」
「…やばい、ここを出よう」
渡辺くんがそう言って立ち上がる。
私の手を握ってそのまま公園を出る。
手！繋いでる！
いつもこういう時、腕を掴むだけだったのに！
やばいやばいやばいやばい。
やばいしか出てこない。語彙力が衰える。
渡辺くん何言おうとしてたのかな。
期待、しちゃっていいのかな。
なんとかバレずにすんだ。
大通りに着く前に一旦立ち止まる。
「この後どうしよう」
「…私の家に行く？」
「えっ、でも」
「私の家ここから近いし、ゆっくり話せるし」
「…」
「…言っとくけど、こんな事誰に対しても言うわけじゃないからね！」
「え…」
「前の時も今も！渡辺くんだから言ってるんだからね！」
「…うん」
それからジャケットを返して
一旦分かれて別々でタクシーに行くことにした。
住所とマンション名をLINEで送る。
タクシーを見つけて乗り込む。
窓から東京の景色を見渡す。
…どうしよう。
手繋いだし、期待させるような事言われたし、
特別に思ってるような事言ったしで
これから私の家で完全な2人きり？
…すでにキャパオーバーなのに、この後どうなるの。
家着く手前のコンビニでおろしてもらう。
家になんかあったっけ。
ガムとかお茶とか最近ハマってるビタミンの飲み物を買う。
渡辺くんも飲むかな…。
あ、このグミ…。
高校の時好きだって言ってたやつだ。まだ好きかな。
…一応買っておこう。
レジに行って急いで家に行く。
裏口のエントランスで待っていると、渡辺くんから着いたと連絡が来た。
そのまま合流して、部屋の前に着く。
「…本当に俺入っていいの？」
「…ここまで来といてダメとは言わないよ」
「そうだけど…」
「…やめる？」
「…いや、お邪魔します…」
渡辺くんが私の家に来るのは2回目。
だけど前回とは違う。
お互いに緊張感が漂ってる。
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おでん(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。そう言っていただき嬉しいです！ありがとうございます！ (2021年3月4日 7時) (
レス) id: 0eda0cdbe1 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - おでんはんはじめまして！このお話本当に大好きです！今までにないテイストで今後も更新楽しみにしてます(^^) (2021年3月2日 20時) (レス) id: 7b49f138be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おでん | 作成日時：2021年2月20日 21時
