涙の自覚 ページ27
「気をつけて帰ってね」
そう言って下を向く。涙が出そうなのをグッと我慢する。
渡辺くんは私に背を向けたまま動かない。
靴も履こうとしない。
早く！じゃないと涙が溢れそう。
渡辺くんが、クルッとこちらを向いた。
「ごめん、やっぱり一緒にいていい？」
覚悟を持ったようにハッキリと声が聞こえる。
やばい。安堵で涙が出た。
私がコクコクと頷くと、
え！なに！どうしたの？！
と驚いててそのまま2人でまたソファへ戻る。
完全に私はもう涙が我慢できずに溢れてて
それを見て渡辺くんはアタフタしてる。
「ごめん、帰ろうとして。そうだよね、怖いよね。本当にごめん」
声を出せないから首を横に振る。
そのくせ涙は出る。
「1人にしようとしてごめん」
そう言って渡辺くんは親指で私の涙を拭ってくれた。
それでも涙は溢れてくる。
嬉しくて。優しさに安堵して。
「大丈夫だよ、俺がいるから」
そんなとこまで言ってくれて。
この前感じたことは勘違いじゃない。
もう誤魔化せない。違う言葉や気持ちを探しても見つからない。当てはまらない。
渡辺くんが好きだ。
こんなタイミングで自覚するとかどうかしてる。
でも多分再会してから割と早めに好きだった。
また消そうと努力してた。
この気持ちをない事にするなんて無理だよ。
だってもうどうしようもないところまで来てる。
力づくで蓋を閉めて、ガムテープで止めて、ガッチガチに固めておいたと思ったけど、
中身がぎゅうぎゅうでもう限界でパンクした。
もうこの想いを無視はしない。
だけど、言わない。伝えない。バレないようにする。
何も望まないから。
だから、せめてこの気持ちを大切にしたい。
渡辺くんが好きだということを許して欲しい。
少し涙も落ち着く。
渡辺くんも少しホッとしたように、またごめんね、と謝ってきて、いや、私がむしろごめんと謝った。
自覚した途端、なんで好きな人の前で泣いてしまったんだ、と情けなくなる。
でも恐怖心は消えてないけど、安心感が募っていて。
家のドアがガチャとなった。
合鍵を使ってマネージャーが来た。
渡辺くんはまたオロオロし始めて、
私もどう説明しようか、迷ってきた。
リビングに入り、渡辺くんの姿を見たマネージャーが今まで見たことないぐらい驚いていた。
でも私は安心しちゃって、マネージャーに抱きついてまた泣いてしまった。
私のその姿と渡辺くんの存在を交互にみてマネージャーが焦っている。
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おでん(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。そう言っていただき嬉しいです！ありがとうございます！ (2021年3月4日 7時) (
レス) id: 0eda0cdbe1 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - おでんはんはじめまして！このお話本当に大好きです！今までにないテイストで今後も更新楽しみにしてます(^^) (2021年3月2日 20時) (レス) id: 7b49f138be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おでん | 作成日時：2021年2月20日 21時
