夜の蜘蛛は縁起が悪い ページ10
「迦葉…オイ迦葉!」
おれを呼ぶ声が聞こえて、目を覚ます。見知らぬ天井。
「起きたアル!可愛いヒロインの名前、わかるアルか!?」
「ちょっと神楽ちゃん、今そんなこと言ってる場合じゃないよ。」
「迦葉さんも目を覚ましてくれた…!」
騒ぐ彼ら。おれと銀はどうやら3日ほど眠り続けていたらしい。
『…ぎ、ん…怪我は…』
「俺なら大丈夫だ。それよりお前は何やってんだ。咄嗟に俺への攻撃を弾いただろ。自分のことも考えずにだ。」
『…あれ、その気配だったのかァ…』
「はァ?ったく…無事でよかった。」
がしがしとおれの頭を撫で、頬に触れる。
そのままじっと見つめられた。
『な、なんだよ…あれ、月詠は?』
「…いねェ。これから聞きに行く。」
どうやらおれ達を助けた男がいるらしい。あいつか、コンテナの上でジャンプ読んでた奴。
『おれも…』
銀に掴まって立ち上がろうとした。少しふらつく。
「大人しく待ってろ。すぐ戻る。」
『…わかった。』
地雷亜と月詠の関係について、日輪にでも聞いてみるか。ふらふらと歩いて日輪の元へ。
「銀さん、迦葉さんにキスでもするのかと思った…」
「もうしてるアルヨ。」
「えっ!?なのに付き合ってないの!?」
地雷亜はかつて月詠の師匠だったらしい。
何度か月詠を作品と称していたのを思いだす。鳳仙の1件でそれが穢されてしまったと。
…ふざけるな。師を名乗る者が、そんなものであってはならない。弟子を裏切るものを、師とは呼ばない。
木刀を手に取る。
「ちょっと迦葉さん、そんな傷でどこに行くつもりだい!?」
『…ちょっとそこまで。』
制止の声を聞かず、走り出した。
町中に細い糸が張り巡らされている。そしてそれは1箇所へ。
…そこにあいつがいる。
部屋の中から月詠を殴る音が聞こえる。
その拳に木刀を突き刺した。
『…よォ。また会ったな。』
「迦葉…?」
「な、なぜ貴様が…!」
そのまま殴り飛ばす。蜘蛛の糸に絡め取られていた月詠を助け出し、抱きしめた。
『…悪ィ。遅くなった。…もう少し待っててくれ。すぐ片付けてやるから。』
「待て、ぬし、血が…」
白かった包帯が赤く染まっている。まだ塞がっていなかったらしい。
そんなことは、どうでもいい。
『…立て。てめェの忠誠心とやら、へし折ってやる。』
「…手負いの獣、か。次こそは仕留めてやろう。」
にやり、と笑った地雷亜が糸に火をつける。
そのまま吉原は火の海へ。
はやく、殺さねば。
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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時