時には優しさも大事 ページ49
「うう…気持ち悪ィ…新八ィ…」
「あ、そろそろ買い物に行かないと。」
「神楽ァ…」
「定春、散歩の時間アル！」
目を覚まして居間に入ると、二日酔いの銀がソファに倒れ込んでいた。助けを求める手をことごとく振り払われ、いじける銀。
『そんなになるほど飲む銀が悪い。』
「なんだよお前まで…みんなして銀さんをいじめやがって…」
完全に拗ねてしまった。餓鬼じゃん。
コップに水を注ぎ、銀に近寄る。
『ほら、飲め。』
「…迦葉…！」
ふらふらとおれに抱き着いてきた。…なんかまだ酒くせェ。
「…飲ませて。」
『はァ…？ったく…』
どうにか銀を起き上がらせ、口元にコップを持っていく。
「そういうことじゃねェけど…何、甘やかしてくれる感じ？」
『要らねェならいい。』
「いやいやいや！…甘やかして、迦葉。」
嬉しそうに笑って、おれに向かって両手を広げる銀。
ソファに座るおれの膝を枕に銀が寝転がる。
『男の膝じゃ硬いだろ。』
「迦葉のがいいんだよ！」
『ええ…』
そのままジャンプを読み始めた。
…甘やかす、とはいっても具体的に何をすればいいかわからない。とりあえず頭をゆるゆると撫で、腹を軽く叩く。
しばらくそうしていると、少しうとうとしてきた。
もぞもぞと銀が動き始めて、ジャンプを置いておれを見てくる。
「…迦葉。」
『…うん、迦葉だよ、銀。』
眠たくて上手く頭が回らず、ただ微笑んだ。
「…可愛い。キス、していい？」
『…は？』
驚いて目が冴える。何を言い出すんだこいつは。
「甘やかしてくれるんでしょ？」
『それは甘やかしじゃねェ。調子乗んな。』
「嫌じゃないくせに。」
『団子でも食いに行こうかな。』
立ち上がるおれにごめん、と必死に抱き着いてくる。馬鹿が…
馬鹿力で離してもらえずソファに戻る。
『最近酒の量まともだったろ。どうしたんだよ。』
「え…いや…ね。(お前に告白する勇気がなくて酒に逃げてたとか言えねェ…！)」
『変な銀。寝れば。二日酔いもそのほうが楽になるだろ。』
「…寝かしつけてくれ。それくらいならいいだろ？」
やっぱ餓鬼だ。…しょうがねェ。
銀の手を引いて部屋に戻る。横になり、頬杖をついて布団を広げた。
『…ん。』
途端に目を輝かせ、飛び込んでくる。そのまま抱きつかれた。何がそんなに嬉しいんだか。
寝かしつけるだけのつもりが、結局おれも再び眠気に襲われて仲良く昼寝することとなった。
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作者名：逆叉 | 作成日時：2024年3月28日 22時
