閑話。 ページ30
ジャンプを読む銀の隣でプリンを頬張る。
先日の1件が落ち着き、また日常が戻ってきた。
視線を感じて銀を見る。
『やらねェぞ。』
「プリンじゃねェよ。…お前、あん時何が見えてた。」
薬を入れられた直後の墓地。最初は次郎長の姿が烏どもに見えていただけだったのに、だんだんそこにいるのがそいつら本人だと思い込むようになっていた。
『…松陽を連れていった奴らが目の前にいた。護らねェとと思って…』
自らの手のひらを見つめる。結局この手は松陽を掴めなかった。
「華佗のところで落ちてきた時、泣いてたよな。何回も俺に、俺達に謝りながら。それも松陽のことか?」
『…え、おれそんなんなってたの。覚えてねェや。』
あの薬で抑えられなかったのは誤算だった。銀も薄々は気付いているんだろうけど、あの件をおれも引き摺っていると確信されてしまうときっと銀はおれを止める。
不倶戴天の本質にまでは気付きやしないだろうが、なにはともあれ決心が鈍ってはいけない。
「…そうかい。俺ァお前の涙を見て、苦しくなったよ。傍にいればいつでもそれを拭ってやれるが、お前はすぐどっかに行こうとするからなァ…」
『でも銀のとこ帰ってくるからいいだろ?』
「そういう問題じゃ…まァいいか。」
優しく笑っておれの頭を撫でる。
「さて、ご褒美のちゅーがまだだったよな。ほら、こっち向け。」
『あ、いや、別におれは…ちょっと、オイ、近付いてくるな…』
「遠慮すんな。お前だってあの時自分からしてくれたじゃねェか。」
『…知らね、お前も幻覚見てたんじゃねェの?』
「そういうこと言っちゃうんだ、迦葉くんは。」
押し返すも力で負け、そのまま口付けを受け入れてしまった。
『…ん、む…ぁ、』
「ふッ…」
ソファに押し倒される。両手を握りしめられ、逃げられない。
だんだん脳が痺れていく。何も考えられない。
『ぎ…ん…』
「は…誘ってんのか?迦葉、かわいい…」
熱い。何度も何度も、喰われるように。
しばらくして顔が離れた。余裕のない銀の顔が見える。
どうにか肩で息を整えていると、銀の手が頬に触れた。
「…迦葉、俺、ずっとお前のこと…」
突然居間の戸が開く。
「戻りまし…ちょっと何やってんですか!僕達お邪魔でしたか!?すみませんすみません!」
「銀ちゃん!迦葉から離れるアル!新八ィ、手伝うヨロシ!」
賑やかな2人が帰ってきた。神楽に殴られ、銀が視界から消える。
しばらく熱は冷めなかった。
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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時