夜の蜘蛛は縁起が悪い ページ12
地雷亜に木刀を叩き込む。相変わらず音もなく現れる苦無が何度か体に突き刺さった。
視界が揺れる。
「迦葉!」
『…目ェ閉じてろ。すぐ、終わらせてやるから…1人にはしねェ、大丈夫だ。』
「強がるのも大概にしろ。ふらついているぞ。」
余裕そうに近付いてきた。月詠を背に、攻撃を弾く。
互いの体に赤い線が刻まれる。
「…ッ、銀時、迦葉を…助けてくれ…」
月詠の呟きが聞こえた。直後、後ろから飛んできた木刀が地雷亜の肩に突き刺さる。
「…汚ェ手で、触れんな。」
『…銀。』
そのまま俺の前に立ち、地雷亜と対峙する。
「いいか月詠。1人で何もかも背負おうなんざ、水くせェじゃねェか。てめェを捨てて潔く綺麗に死んでいくなんてことより、小汚くてもてめェらしく生きていくことのほうがよっぽど上等だ。」
…なんだかおれにも言われている気がして、思わず目を逸らした。
「迦葉。俺もお前と同じだ。だからここへ来た。なんで1人で先走ってやがる。なんで1人で戦ってやがる。離れるなって、言ったはずだ。」
『…うるせェ。体が動いてたんだ。ひとたび師と名乗っておきながら、弟子裏切る奴がいるなんてよ。…銀。おれから離れんなよ。』
「そいつァ俺のセリフだ。地雷亜、巣に掛かったのはてめェのほうだ。俺の巣、土足で踏み荒らしたからには生きて出られると思うな!」
共に木刀を構える。
室内に糸を張り巡らせた地雷亜が僅かに動揺した。
喰い合い、だ、
素早い地雷亜になんとか反応する。おれ達の攻撃が当たらない。ならば、と飛んできた苦無を掌で受け止め、糸を引っ張り相手の手に巻き付けた。
『…はッ、捕まえたァ!』
「またんなことやりやがって…迦葉!そのまま寄越せ!」
伸ばされた銀の手にも糸を巻き付ける。苦無を引き抜き、2人から距離を取った。
銀の反撃が始まる。逃げられないまま木刀で殴られ続ける地雷亜。
立っていられなくなったおれは、その場に膝をついて銃剣で地雷亜の苦無を弾いた。
「なぜ…お前達が…俺と拮抗する力を…俺は…全てを捨ててきた…なのになぜなんだ!」
「まだわからねェのか…お前が捨てたもんの中には、大切な荷も混ざってたんだよ…臆病者の相手は、臆病者で十分だ。てめェの相手は、この俺で十分だ。てめェに師匠の名を語る資格はねェ!」
松陽の背で揺られ、歩いた時を思い出す。
『…てめェに、荷ごと弟子を背負う背中があるか。』
銀の頭突きが地雷亜を捉えた。
12人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時