【d！】【短編集】恋愛カルテ (ページ33)

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閉鎖された塔～sypーページ33

こんこん、と窓をノックする。この高い塔の中に幽閉されているのは、年端もいかない少女。それが、少女を思っての幽閉だと言う事は、少女自身も、気づいていた。

「…恐い、吸血鬼様?」

窓越しに聞こえた声に、心臓がドクンと音を立てる。その少女の声は、聞いたことがないはずなのに、どこか懐かしく、身体を焦がした。あぁ、きっとこの子は、俺が探し求めている子だ。そう思った俺は、くく、と喉を鳴らし、気づかれないように舌なめずりをした。

「吸血鬼だけど、怖くはないですよ。」

嘘はついていない。俺は、吸血鬼族の中でも、優しい方だ。グルッペンさんの様に、威圧感にとらわれているわけでもないし、ゾムさんのように、顔を隠しているわけでもない。ただ、少女の家系とは、因縁があるだけ。

この塔に幽閉されている少女は、その少女を守るために、様々な趣向を怒らしていた。少女の1族は、俺ら吸血鬼にとっては何よりものご馳走で、特に女性は、体が震えるほどうまい。そのため、一族人女が生まれると、俺らがこぞって誘拐する。申し訳ないが、それが慣わした。

「…怖く、ないの…？」

「怖くないですよ。だから、ちょっと入れてもらえませんか。」

俺の言葉に、少しためらったように返答した少女に、声を和らげてもう一度言う。今日、俺はこの子を誘拐して家に帰る。この少女は、俺にとってこれまでで1番のご馳走となるだろう。それだけ、声だけで魅了される。

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