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35本目 ページ35
「トントン、今日元気ないけどどしたん、体調悪い？」
視界の端からスルッと入ってくる茶髪の男。俺の顔を覗き込むように距離を詰めてきた彼にハッとする。どうやら意識が飛んでいたらしい。手は仕事しとるし、さっと目を通す感じミスもなさそうやけど、それをやっていた記憶はない。
慌てて時計を見れば、昼休みが始まってすぐ、といった辺りの時間。心ここに在らず、と言った状態の俺に気をかけ、昼休みになった途端に声をかけにきてくれたんだろう。
「…や、全然元気やで。ありがとな、ゾム。」
目の前の彼、ゾムに軽く笑いかけて伸びをする。いかん、俺Aさんに振り回されすぎとる。意識を切り替える意味も込めて深呼吸をし、やりかけの仕事を中断する。
「こないだも体調崩しとったし今日もぼーっとしとるし…心配なんやけど。」
そのまま飯の調達に行こうとする俺の袖を引いて、拗ねた様な顔をするゾム。拗ねた様な、というか、実際拗ねてるところもあるんやろ。俺の体調不良時の焼肉にゾムは来んかったし、その後なんの説明もしとらんし。ゾムのことをあからさまに避けた時期もあったくらいやし。
「ほんまに大丈夫やって。俺個人の勝手な悩み事やから。」
不満そうに俺の周りをうろちょろするゾムを不本意ながら引き連れて、近くのファストフード店に入る。こいつと一緒やといくら食わされるかわからんし、といつも食事は避けていたのだが、今日は離れてくれる気配がない。
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