・ ページ6
ci side
「…ｯ、ﾊｯ…」
『……どうした。手が震えてるぞ。』
拳銃を握る手が震える。
その銃口は目の前の仲間……だった男に向けられている。
銃を向けられているにも関わらず、自分とは対称的な程Aは落ち着いていた。
部屋に入って直ぐから感じていた違和感。
覚悟を決めた、そんな雰囲気を纏うAは、まるで別人の様だった。
(そんな覚悟……気付きたくなんか無かったわ…)
「お前…!何言っとるか分かってんのか…!?」
『言葉通りの意味だ。お前ならもう気付いてんだろ。』
だから、早く。
そう淡々と告げるAに、
“突き放された”と感じてしまう位には、まだこの男を信じていたかったのだろう。
震えた指をトリガーにかければ、
乾いた発砲音が、狭い拷問部屋によく響いた。
『…ｯ……下手くそ、』
弾は頬から
鮮やかな血がコンクリートの床に飛散する。
何処を狙っているんだ、と言いかけた言葉を遮る様にチーノが言葉を発した。
「俺に…、……俺に殺させる気、なんかｯ！」
チーノの心に広がった其れは、怒りでも憎しみでもない、ただ深い悲しみだけがそこにあった。
軍人としての自分の意志を、友人としての自分がそれを凌いだのだ。
『……、』
「何で…」
……何でお前がそんな辛そうな目すんねん。
ようやく此方を見たAの瞳は、微かに揺らめいている。
「そこで何してる？」
Aに気を取られ、気配に気づけなかった。
振り向けば、ドア枠に背を預けて此方を睨むグルッペンの姿があった。
ci「そ、総統…!!」
しまった、会議が思ったより早く終わっていた様だ。
gr「チーノ君、だったな。此処で何を？」
ci「も、申し訳ございません、その…Aは……」
言わなければ。
Aは、敵国のスパイです。と。
たったその一言が喉に張り付いたように出てこない。
gr「ああ。そのことなら幹部内では周知の事実だ。」
ci「はい、…………え？」
場にそぐわない、間抜けな声が出たがそんな事はどうでもいい。
何も口に出さずとして、総統は此方の意図をくみ取り、その返答が
“周知の事実”と。
gr「…くれぐれも内密に。解れば部屋に戻りたまえ。」
ci「はｯ……!」
深々と頭を下げて絞り出した声は、掠れて上手く音にならなかった。
(どういう事や…！？A…！)
扉を閉める前にチラリとAを見るが、、
その目はただ床をじっと睨みつけるだけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あ(プロフ) - 更新待ってます...。。 (2022年11月26日 18時) (
レス) @page46 id: f1c4052875 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - 黒カビさ〜ん！お久しぶりでっす！僕が最近いなかった理由をまとめたので見てくれると嬉しいです (2020年12月19日 16時) (レス) id: d1b989425f (このIDを非表示/違反報告)
黒カビ(プロフ) - 桜良ゆきさん» 桜良ゆきさん、お優しいお言葉ありがとうございます…！；；亀更新となっておりますが、引き続き楽しんで頂ければ嬉しいですm(_ _*m) (2020年8月20日 15時) (レス) id: 0d84c7512f (このIDを非表示/違反報告)
黒カビ(プロフ) - Lunaさん» Lunaさん、おわーーーーコメ気付かず申し訳ない…！！；；；；亀更新となってしまってますが引き続き楽しんで頂けたら嬉しいです…！ (2020年8月20日 15時) (レス) id: 0d84c7512f (このIDを非表示/違反報告)
桜良ゆき(プロフ) - いつも更新ありがとうございます！作者様こそ体調を崩されないよう、お気をくださいませ！気長に待っております⊂((・▽・))⊃ (2020年8月15日 13時) (レス) id: 82b27650f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒カビ | 作成日時：2020年5月20日 17時
