・ ページ17
それとな、とゾムが少し口籠った。
交えていた視線は、泳ぐように明後日の方向に向けられている。
「その…チョーカーの事やけど。
あれ、実は爆発せぇへんねん。」
『は………はあぁぁ…??』
「ああでも言わんと、お前逃げるし。」
どうやら既に開発されていた起爆機能付きチョーカーではなく、それに酷似した偽物を付けさせ、グルッペン達を言いくるめる事に成功したらしい。
まぁどっちみち逃げられたんやけどな。と、少し悲し気に笑うゾムに、抗議する気も失せてしまった。
…どうしてこの男は、
(とことん俺に甘ぇ…)
『……―――頼むから、ずっと嫌なヤツのままで居てくれよ。』
そう小さく呟いて、再び顔を下げてしまったAの髪を、
ゾムは一束掬い上げて小さく口付けを落とした。
突然の行為に肩を一瞬ﾋﾞｸつかせ、直ぐ様やめろと言わんばかりに睨みつけるAに、
ゾムの口から笑みが零れる。
「っふwそんに照れんくてもええのに。」
『っ殺す！』
「(……この様子やと、どういう意味か分かってへんやろなぁ)」
慰めのつもりなのか、自分の頭をぽんぽんと撫でるゾムの手を、
何故か振り払えないでいた。
楽しそうに、慈しむ様に、それでいて少し寂しそうに目を細めるコイツの所為だろう。
(やめろ、)
そんな瞳で、真っ直ぐに俺を見ないで欲しい。
閉じ込めたものを、思い出させないで欲しい。
(コイツは、俺には毒だ……)
心の底で待ち望んでいたものを、あんまりに容易く俺にくれるから。
大切なものなんて持たなければ、また失ってしまう痛みを知らぬままいられるのに。
それでも、
自身を見つめる新緑色に、少しだけ、期待してもいいだろうか。
12年前から、誰にも心を開く事無く閉じ込めていた思いを
目の前の男にゆっくりと吐き出した。
“此処に居たい”
“傍に居て”
ぽつりと呟かれたそれらの言葉は、微かながらもゾムの耳へとしっかり届いた。
初めてAから求められたその言葉に、思わず目を見開く。
「ようやく素直んなったなぁ。…………ええで。約束、やな。」
自身を抱きしめる男の腕は、暖かい。
もう随分と昔に忘れてしまっていた心地よさに、Aはゾムの胸の中でそっと目を閉じた。
******
髪へのキス
意味:思慕
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あ(プロフ) - 更新待ってます...。。 (2022年11月26日 18時) (
レス) @page46 id: f1c4052875 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - 黒カビさ〜ん！お久しぶりでっす！僕が最近いなかった理由をまとめたので見てくれると嬉しいです (2020年12月19日 16時) (レス) id: d1b989425f (このIDを非表示/違反報告)
黒カビ(プロフ) - 桜良ゆきさん» 桜良ゆきさん、お優しいお言葉ありがとうございます…！；；亀更新となっておりますが、引き続き楽しんで頂ければ嬉しいですm(_ _*m) (2020年8月20日 15時) (レス) id: 0d84c7512f (このIDを非表示/違反報告)
黒カビ(プロフ) - Lunaさん» Lunaさん、おわーーーーコメ気付かず申し訳ない…！！；；；；亀更新となってしまってますが引き続き楽しんで頂けたら嬉しいです…！ (2020年8月20日 15時) (レス) id: 0d84c7512f (このIDを非表示/違反報告)
桜良ゆき(プロフ) - いつも更新ありがとうございます！作者様こそ体調を崩されないよう、お気をくださいませ！気長に待っております⊂((・▽・))⊃ (2020年8月15日 13時) (レス) id: 82b27650f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒カビ | 作成日時：2020年5月20日 17時
