19話 ページ20
二人の間に冷たい風が吹く。
Aは悲しげに笑い『ごめんね』と返した。
「……なんでコッチ側に来た。
もう、アンタのことなんて忘れてたのに」
どちらもが、10年間忘れようと必死だった。
しかし、再会が薄れた記憶を甦していく。
「殺したいんだろ？オレがアンタの幸せを奪ったから」
『違う』
「違わねぇだろ。だったら、アンタみたいなお人好しがコッチ側に来んだよ」
『私はまともな人じゃないし、人を絞め殺しかけたこともある、康宏が止めるまで人を痛めつけたこともある』
結局、武藤康宏も、黒川イザナ、佐野万次郎も、そして三途春千夜の時も否定ができなかった臆病者。
大切な人を傷つけられ、殺されても、裏切られて、壊れて行くのを見ても、私は最後まで食らいついて、殴ってまで止めなかった。
『…春千夜こそ、殺したいんじゃない？』
「＿＿は？」
『裏切り者だから、いつか殺すって言ってたじゃない』
･
･
･
あの日、関東事変終幕後
＿＿康宏が帰ってくる日だった。
鳴らされたインターホンに、浮き足立ち玄関を開ける
けれど、そこにいたのは三途春千夜だった。
「お久しぶりです、姉御」
『あ、春千夜久しぶり〜
いつもマスクしてるから一瞬誰かと思ったよ、今日はしてないんだ？』
何も言わず微笑む彼に違和感を感じたものの
ふと、すぐそこに車が止まっているのが見えた
『もしかして康宏を迎えに行くの？いつも運転してくれてありがとうね』
「＿＿あぁ、迎えならもう行きました！｣
『え？』
「俺はアンタにこれを届けに来てやっただけです」
差し出される透明なポリ袋
そこには小さな箱が入っていて
＿＿べっとりと、生々しい血がついていた
『……なに？これ』
「さぁ、隊長がアンタにあげるつもりだった指輪じゃないですか？まあ、聞くにもう聞けないですけど」
康宏のもの、血は……と思考が巡る
なら届けた春千夜は＿＿
『…どうして、こんなことしたの？
わかんないよ。教えてよ、春千夜＿＿ッ！！』
「……わかんない？裏切り者の報いだろ
オレたちは最初からそうじゃないですか｣
＿＿疑わしきは罰する。
彼らは最初からそうだった。裏切り者には容赦しない。
心臓が異様に速い。
今までくれた言葉、向けられた笑顔は？
何が正しくて、本当なのかが分からない。
「……いつか、裏切り者のアンタも殺してやる。それまで、せいぜい苦しんで生きてください」
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為人(プロフ) - ふらんそわ。さん» ありがとうございます´`* 頑張ります (2022年1月16日 21時) (
レス) id: 8ac863d303 (このIDを非表示/違反報告)
ふらんそわ。 - 面白いです‼︎続き気になるッ…‼︎‼︎ (2022年1月15日 0時) (レス) id: 149dedba41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：為人 x他1人 | 作成日時：2021年10月31日 23時
