婚約者5 ページ6
＊
「…………は？」
目の前でくつろいだようにお茶菓子をつまみながらなんでもないことのように言った母の言葉が理解できなくて、おもわず間抜けな声を漏らしてしまう。
父は正座して湯飲みを手に持ちながら、いつも以上に気持ち悪いほどニコニコと笑みを浮かべている。
……聞き間違えたか？
そうじゃないか、いやそうだと思いたくて、聞き返す。
「……もう一度言ってくれる」
「だーかーらー」
しょうがないなあ、という風にかわいらしく頬を膨らませる母の様子は自分とは似てもにつかなくて、時々僕は本当にこの人の娘なのか疑いたくなってしまうほどだ。
「Aちゃんの婚約者とのお見合いが、明日あるって話！」
「………………」
「？ Aちゃん？」
……どうやら、聞き間違いではなかったらしい。
どうしたの？ とでも言いたげに首を傾げる母の様子に、頭が痛くなる。隣の父の笑顔もどこか苦笑いのようなものに変わっている気がした。
……なるほどね。
今日唐突にアジトを訪ねてきた理由がようやくわかった。普段は僕が訪ねるのに珍しいと思ったら……前日に言えば断られないとでも思ったのだろうか。
だとしたら……
「……随分と舐められたものだね」
「え？」
「なぜ僕がお見合いなんてしなくちゃならないんだい。ふざけないでくれる」
「っ……」
ヒュッ、と母が小さく息を呑む音が聞こえた。
普段僕は、“家族”という群れだけは許容している。小さく弱い草食動物たちは、最低でもこの群れを成さないと生きていけないから。僕は違うけどね。
だから、自分の家族というものにも特別強く当たることはなかった。父はなかなか咬み殺しがいのある肉食動物だしね。
けど、今は……
生まれて初めて、母に本気で殺気を向けている。
「A、やりすぎだよ」
「君だって、こうなることがわかってたから
「流石だね」
笑みを崩さずに、さも驚いたように目を見開く父が心の中で真逆のことを考えていることを僕は知っている。
チャリン、と微かな音が聞こえた瞬間僕は反射的に後ろに飛びのき、トンファーを構える。……つい先ほどまで僕が座っていた場所には深々とトンファーが突き刺さっており、ほんの一瞬でも反応が遅れていたら頭蓋骨が粉々になっていただろう。
「……ワォ」
ああ、楽しくなってきたな。自分の口角がゆるりと上がるのがわかった。
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ゆきか - 初コメ失礼します！すごく好みの作品で楽しく見させていただいています！続き待ってます！ (2019年10月28日 16時) (
レス) id: f42ad21887 (このIDを非表示/違反報告)
夢うさぎ??(プロフ) - ゆうりさん» コメントありがとうございます！ あわわ、面白いだなんて……ありがとうございます！！ まだまだですが、より面白い物がかけるように頑張ります！ (2019年7月1日 3時) (レス) id: 4da07b4f90 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうり - 関連作品ランキングにあったので、読んでみたら凄く面白くて一気読みしてしまいました。受験大変ですよね(-_-;)私も去年大変でした。 頑張ってください！応援してます！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: 616da87ebb (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - むにゃさん» コメントありがとうございます！ 頑張ります！！ だいぶテストやばいんですが、人生初ライブなんでなんとかしたい、いやしてみせようと思います！！ (2019年4月3日 17時) (レス) id: 8a8c64050c (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - 露都さん» コメントありがとうございます！ 死ぬ気で頑張ります！！ 更新はしばしおまちを……。 (2019年4月3日 17時) (レス) id: 8a8c64050c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢うさぎ | 作成日時：2019年3月26日 16時
