六十七話 ページ34
side雲雀
でも…
「こんなになるまで、気づけなかった。君が疲れているのには気づいてたのに。」
そう言いながら、下から覗きこむように目を合わせる。目を合わせるのは少し怖かったけど…彼女の本当の気持ちを、知りたかったから。
「僕が気づかれないように頑張ったんですから、当然ですー。というか、疲れてるのに気づいただけでも、すごいですよー？」
諭すような口調で、……まるで、無表情だった顔の表情を溶かすように、ふにゃり、と微笑んだA。
重ねられた手のひらは、生きていることを主張するように温かく、僕の不安を、怯えを、全て溶かしてくれた。
どこか上から目線な言葉に、いつもなら苛立ちを覚えるのに。
…いつも通りのような、逆に良い意味でいつもと違うAの様子に、一気に肩の力が抜けた気がした。
…この件に関して、僕が悪いとは思うけど。
Aはそう思ってない、というかたいして気にとめていないような感じさえした。
その雰囲気が、まるで僕が悪くないと僕に思わせようと、気にするなと気遣っているように思えるのは、深読みだろうか。
背中に回された手と、彼女の微笑みが、その気持ちを強くしていた。
…と、ここまで思い馳せたところで校門に着いた。
上履きは仕方ないから持って帰ることにして、靴は手で持ってきた。
彼女は目を覚ましたものの、医者は２週間寝てないと言っていたから、休養が必要だろう。
どうやって彼女を送ろうかと考える。
今日はあいにくバイクで学校に来ていた。
考えたすえ、彼女をバイクの前に乗せ、その後ろから抱きしめるようにして支えながらゆっくりとしたスピードで乗って帰ることにした。
法律違反？知らないよそんなもの。
そんなもので僕を縛れると思ったら大間違いだよ。
彼女の家に着いた。
本当は僕の家に泊まらせたかったけど…彼女が本気で怒るのが目に見えてわかり、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
彼女のカバンから鍵を取りだし、ドアを開ける。
不法侵入じゃない、家主がすぐ近くにいるからね。
彼女をそのまま寝室と思われる部屋まで運び、靴を脱がせて一息つく。
重かったとかそういう訳じゃないけれど、今日という１日はあまりにも濃く、疲れてしまったのだ。
彼女が眠るベッドに軽く腰かけながら舟をこぎかけるが…彼女が起きるまで眠るわけにはいかない。
そう思いながらも意識はだんだんと闇に引っ張られるように……途絶えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - seraさん» ありがとうございます！ (2018年11月20日 17時) (
レス) id: be5de4e45a (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - アドバイス、夢さんのボードの方に書かせて頂くのでよろしければそちらを見てください。 (2018年11月19日 19時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - 弥生さん» ありがとう！！今回はハロウィンのに比べて糖度低めになると思うけど完結は約束するぜ！！ (2018年11月11日 22時) (レス) id: a76610752b (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - ポッキー!!!頭のなかで二人の光景が思い浮かんでさらに爆笑していた(ﾟ∀ﾟ≡ﾟ∀ﾟ)夢ちゃん頑張ってね(*´∀｀*) (2018年11月11日 18時) (レス) id: 6f48ec4925 (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - 美香さん» フラグついたのはこちらだけなのでおそらく違うと思われます。コメントありがとうございます！！ (2018年11月8日 22時) (レス) id: a76610752b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ | 作成日時：2018年10月14日 8時
