炎の呼吸 伍拾玖ノ型 ページ9
「彼はAちゃんへの処遇を決めるにあたって、重要な証人になります」
「A…!この鬼を庇うつもりか!?」
縁下くんを庇うように立った私の発言に、柱達が一斉に立ち上がる。
小芭内が震える指で私をさしてそう言うが私は静かに首を横に振る。
「いいえ。私は一鬼殺隊員として処刑を望みますが、Aちゃんを殺したところで鬼が本当に居なくなると思いますか?」
「どういう事だ?鬼の始祖を殺しても変わらないのであれば俺達が鬼を殲滅するまで!」
杏寿郎が額に青筋を立ててそう言うが、私はそれにも首を横に振る。
「私は自分の感情でAちゃんを生かす、と言っているのではありません。御館様、貴方ならもう全て知っているのではありませんか?」
すっと御館様を見据えてそう言うと、御館様はいつものように微笑み続けていた。
誰も何も言わない、静かな風だけが音を立てる。
自身の吐息でさえうるさく感じる空間に嫌気が差し私は口を開いた。
「私は柱の中で最も弱いです。御館様がそれを知りながら私に立案を任せたのも、烏野に潜入させたのもこうなることを理解していたからなのではありませんか?」
「潜入は偶然だ、年も丁度良くて柱だからね。…それに、私はAが弱いと思ったことは無い」
御館様はゆっくりと立ち上がると、Aちゃんの目線の先に立ちAちゃんを眺めた。
Aちゃんも御館様を見ていて、私達の間には緊張感が走った。
「Aは、死ぬのが怖いかい?」
「そんなわけない。私はずっと死にたかった」
「何故そう思う?」
「私は生きる価値がないから。こんな人間でも鬼でもない中途半端な化け物」
Aちゃんはそう言うとゆっくりと立ち上がり、体や服についた汚れを叩き、御館様を睨みつけた。
刀を抜こうとする私達を手で制し、御館様は微笑んだまま続けて言った。
「鬼を生み出したのは本当にお前かい?」
「違う、私は鬼の生き残り。鬼舞辻無惨が死んだあと、鬼を生み出したのは私の片割れ」
Aちゃんの言葉に私は息を飲んだ。
あれだけ探しても鬼の反応が無かったこと。
蜜璃でも出来なかったそれに合点がいった。
Aちゃんは殺気立った目で私を指さして言い放つ。
「全部話すよ、私が知ってること。でも、1つ条件がある。力を傷1つつけずに無事帰すこと」
「…だそうだ。どうするんだい?A」
御館様は私にそう応えを求めた。
当然返事は1つしかない。
「私達鬼殺隊は人間を傷つけません」
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作者名:くゎじゅ | 作成日時:2021年5月10日 1時