生まれた世界に乞う弐 (ページ6)

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炎の呼吸伍拾陸ノ型ページ6

満たされなかった。
食べても食べても体が、脳が、人の血肉を求めていた。
あの女が呪いを解いたのは知っていた、私もそうすればこの飢えから逃れられると思っていた。
私だって苦しまずに生きていたかった。

「い…」

好きでこうなったんじゃない、私だって、私だって。

「お……おい…」

食ってしまいたい、殺してやりたい、私より幸せに生きる人間全てを。

「おい！！」

怒号に反応して勢いよく目を開けると、私は地に伏せられ、体中をロープで縛られ上から誰かに押さえつけられていた。
目の前には今までに見たことの無いくらい大きい屋敷と、上から垂れ下がる金と赤の毛。
Aちゃんだ、Aちゃんが私を押さえているんだ。

「ここは…」

唖然として辺りを見渡すと、私の横に並ぶようにして何人かの人間が跪いて頭を下げているのが視界に入った。
そこにはAちゃんに似た男の人と、白髪の傷だらけの人もいて柱だと理解した。
炭治郎くん達とは格別なオーラに圧倒された。
強い、私を見ずともひしひしと殺気が肌に伝わる。

「よく来たね、見ノ木A」

その声と共に、殺伐としていた空気が和らぐのを感じた。
いや違う、柱は私を殺す気だし殺気なんて和らいでいない。
私の体がそう感じたんだ、この声を聞いて。
この安堵感…これは、1/fゆらぎだ…。

「私は産屋敷耀哉、鬼殺隊の当主だ」

「…ははっ」

鬼殺隊の当主までも産屋敷家の末裔。
先見の明の持ち主じゃないか…。
もう私に勝ち目はない、生き残る術もない。
私は今日、ここで死ぬ。