いつか、出会ってしまった幼子へ。【銀魂】【吉田松陽】

逃げろ ページ7

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「あ‥‥‥‥」



足が動かない。あの狼が狙いをつけているのは己ではないと分かっているのに、恐ろしい。


恐怖にかき消されそうな記憶を何とか探り、大人達に教わった事を思い出す。



《狼にあって、狼がこちらに気づいていなかったら、絶対声を出すな。



本当に獲物を求めるケモノは、呼吸の音すら聞き分ける。



口を封じ、ゆっくり、静かに息を吸え。



そして、落ち着け。



心を落ち着けたら、枝葉の少ない道を選んで、ゆっくりと音を出さないように後ずされ。



その余裕ができるまでは、ひたすらに‥‥‥》









(静かにしていてくれ‥‥‥‥)



聴覚を、極限まで研ぎ澄ませろ。


風の行く音。狼の荒い息、己の鼓動。


心の凪ぐ音を、荒れ狂う狼の空腹を。


子供の、ケモノを恐れる叫びを。


聞け。





錫杖をまっすぐに持つ。研いだ尖端を狼に向け、その血眼(ちまなこ)を見据える。















次の瞬間、狼は跳んだ。




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