百三十二話/先輩様の云う通り ページ42
会話が一段落したタイミングを見計らって「おい太宰」と国木田が椅子から立ち上がった。彼は何枚もある紙をひらひらさせ乍ら、
「お前はAの上司だろう。Aの分もまとめて早くマフィアに囚われた件の報告書を出せ」
「好い事考えた!国木田君、じゃんけんしない?」
閃いた、とばかりに出される提案を、国木田は「自分で書け」と即座に切り捨てる。
「ーーふむ」
一瞬の思案。太宰は国木田に押し付けられた報告書を手に敦の方へと振り返った。胸に手を当てて先輩面をつくる。
「敦君、今日は君に報告書の書き方を教えようと思う」
「こ……この流れでですか?」
一連の様子を見ていた敦は当然渋い顔。とはいえ、太宰なら本当に敦に書かせかねない。ここはーー、
「ーーわ」
「今回の件は敦君にも関わる話だよ」
割って入ろうとしたところで、太宰が口を開いた。
ーーわざとだろう。
瞳の温度を冷えさせるAに微笑みかけてから、太宰は表情を真面目なものにする。
「君に懸賞金を懸けた黒幕の話だ」
太宰の言葉に、敦は声をあげた。
「判ったんですか!?」
「ーーマフィアの通信記録に
報告書を机に置き、太宰は整った目を細めた。
敦が固唾を飲み込む。
「出資者は『
語られる内容に敦は反応出来ない。それは、彼が『
故にここは『
「実在するのか?
自分でも半信半疑なのだろう。聞きかじり程度の知識なのか、国木田の声音には疑念が色濃く滲み出ていた。
彼から語られるはポートマフィアでAが把握したものと同じ内容だ。
組合の膨大な資金力、他にもいくつかの情報を話終えると、「まるで三文小説の悪玉だな」と所感を述べた。
「第一、そんな連中が何故敦を?」
「おっしゃるとおりで……」
「直接訊くしかないね。逢うのは難しいだろうけどーー」
眼鏡をいじる国木田と、頬を搔く敦には全く緊張感が感じられない。二人とも、太宰の話をそこまで本気にはしていないようだ。
太宰に便乗するという訳では無いが、今回の件に
「ーーーー」
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作者名:女中 | 作成日時:2022年6月11日 11時