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百五話/異能力非所持者 ページ5

「ーーーー」


そうして会話が一段落したところで、敦が乱歩へと視線を移す。
伺うような彼の視線は、先刻の太宰の説明が原因だろう。
それは、今から十五分程前のことーー、


「凄かったですね、乱歩さん!」


杉本が自白した後、部屋から移動していたAと敦、そして太宰は、乱歩の帰りを待つ為に外へと向かっていた。


「……本当に凄かったよね。全部()てちゃって」


「事件の真相が判る異能力なんて本当にあるんだって、僕吃驚(びっくり)しちゃったよ」


と、目を輝かせている敦にAが口元を緩ませる。
それから一瞬思案げに目を細めて、


「でもーー」


「半分……くらいは判ったかな」


何事か云おうとするAの言葉を引き継ぐように、太宰が顎に手を当ててそうこぼす。
そのAと太宰の声に敦は不思議そうに顔を上げた。


「判ったって……何がです?」


「だから先刻(さっき)のだよ。乱歩さんがどうやって推理したか。Aちゃんも気付いているのだろう?」


此方を伺うような太宰の視線。Aはそれが苦手だ。太宰の視線なら尚更。
故にAは特に隠そうともせず、「はい……本当に少しですが」と太宰から視線を逸らした。


「え?だってそれは能力を使って……」


「能力は使ってたと思うけど所々証拠とかもあったんだよ。ーーとなると、『超推理』は事件の真相が判る能力じゃなくて、証拠を捉える能力とかなのかな」


そうして顎に手を当てるAと、困惑する敦を見て、太宰は「あぁ」と思い出したように、


「君達はまだ知らなかったか」


「ーー?」


お互いに顔を見合わせ、疑問符を浮かべるAと敦に、太宰は「あのね」と笑う。


「実はね、乱歩さんは能力者じゃないのだよ」


「へっ!?」
「え……っ!?」


今明かされる衝撃の事実に敦とAが喉を引き攣らせた。


「乱歩さんは能力者揃いの探偵社では珍しい、何の能力も所持しない一般人なんだ」


「えっ!」


「本人は能力を使ってる心算みたいだけど」


そう、口の端を引き伸ばしている太宰にAは絶句する。敦は「でも……」と声を上げ、


「どうやって事件の場所や時間を中てたんです!?」


「それは……」


場所は判らないが、時間などの大体はAにも何となくだが、判っていた。
それを敦に伝えようと舌に乗せようとするとーー、



「ーー彼、云ってたよね」


そう、太宰が本日何回目かの割り込みをしてきた。

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作者名:女中 | 作成日時:2022年6月11日 11時

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