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百十三話/先輩のお手本 ページ23

太宰がキーボードを数回叩いた瞬間、部屋のパソコンが一斉に文字列を映し出す。
目に映るのは、ポートマフィアの情報だ。宝物庫ともいえるパソコンのデータには少なからず機密情報も入っているだろう。
先刻も一度気持ちの整理は自分でつけたつもりだったが、こうして実際に目の前にあるそれを見ると恐怖心が勝ってしまう。


「敦君を()おうとした人物を探す……」


目にも止まらぬ速度で画面を変えては文字列を映し出し、ポートマフィアの裸体を晒していく機械を目の前に、Aは当初の目的を確認する。
必要なのは敦についての情報だけで、他は必要ない。見ただけで殺されるような情報も入っているこの機会は爆弾だ。
敦関連以外の情報は視界に入れないようにするしかない。
そうすれば、少しは殺される確率もーー、


「まぁ、入室してる時点で死刑は確定だけどね」


「……心を勝手に読まないで下さい。というか、真面目にやってます?」


此方を見て笑みを浮かべる太宰に、Aは眉をひそめた。Aの方を見ているということはつまり、画面を見ていないということだ。こうして話している最中にも情報は流れ続けているのだから、しっかりして欲しい。
ーー尤も、この部屋にある五台全てのパソコンを同時に見るのは不可能だろうが。


「酷いなぁ、ちゃんとしっかり真面目にやってるよ。ーー此方側二台は古い情報、Aちゃんの方も芥川君が対応しない案件のものだらけだ」


入って右側に二台、左側に二台あるパソコン。その全てを太宰は見ていたのだろうか。注意したAより、された太宰の方が的確に物事を見ていて、何だかバツが悪い。
ともあれーー、


「……それじゃあ、矢っ張りーー」


「うん、このパソコンだね」


二人の視線は、部屋の再奥。一際大きなパソコンに向かっている。五台目のパソコンだが、雰囲気というかなんというか、このパソコンだけ明らかに何かが違う。大きさの問題だろうか。


「早く見つけましょう。いつ、構成員が異変に気づくか判りませんから」


文字列を辿り乍ら、Aは意識を決意で塗り固めた。
不安もある、力不足が否めない点もある。
ーーでも、ここまできたなら絶対に帰ってみせる。
そう、誓った。

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作品ジャンル:アニメ
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作者名:女中 | 作成日時:2022年6月11日 11時

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