四十七話/異能力使用条件 ページ47
何か、そう。人が倒れたような音がして、太宰への文句を中断し、少女ーーAは音源へと振り返った。
その黒紫の瞳に映るのは、敦が倒れている姿で。
「敦君!」
倒れ込んでいる少年へと駆け寄ろうとして、Aは脚を止めた。
気付いたからだ。敦が倒れた瞬間に鳴った、あの無機質な機械音の正体に。
「あ」
思わず、間抜けな声が出た。
鼓膜は敦の叫び声で震えている。その瞬間、いっそ盲目的なほどに、それはAの頭に浮かんだ。
ーー助けないと。
「爆弾!爆弾!あ、あと三十秒!?」
目的以外の不必要なものなど何も浮かばないAの頭に、敦の叫び声が滑り込んできた。その短い残り時間に歯噛みして、探す。
あの爆弾と同じような大きさか質量のものを。
「何処!」
見付けて、手に取ればAの異能力で交換することが出来る。だから、見付ける為に走る。
幸い、先程の爆弾魔確保の活躍を称賛する為に、事務員全員。恐らくこの部屋にいる人間は、敦とA以外は国木田と太宰の元へと集まっていた。
ーーならば、Aがとる行動は一つだけ。
敦や国木田等と極力離れた場所で異能力を使用することのみ。だが、それも爆弾の位置を交換して初めて成功するもの。
「これ、で!!」
国木田等と離れた場所にあった情報入出力電子端末。
質量は分からないが、形状的には爆弾とほぼ同じだ。
正直、異能を使用した後のことは浮かばないが、流れに身を任せておけば何とかなる。
ーーそう、思っておけば死への恐怖が多少は薄まるから。
「……っ。重い!」
手で持ってみると、情報入出力端末の本体部分は想像より重かった。だが、今は時間が無い。
Aは、四角い箱型のそれを何とか持ち上げると、
「異能力───『茨の冠』」
異能力を、発動させた。これで全員助かる。
ーーA以外は。
「ーーあ…れ」
だが、待ち望んだ変化は何時まで経ってもやってこない。というより、異能力発動の際のあの例の釦が、無い。何処にも、何処を探しても。
「な、んで!なんで!」
何処にも、見付からなかった。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時