三十七話/初めての朝 ページ37
「ふぁ……」
鳥のさえずりと窓から差し込む陽光に少年ーー中島敦は目を覚ました。
「ここ、どこだ……」
起きたばかりで朦朧とする頭を何とか回転させる。
だが、浮かぶのは孤児院の起床
考えても分からない、眠い。
そうして、敦が頭に疑問符を浮かべているとーー、
「あ!!お早う敦君」
「ーー!?」
不意に声が敦の鼓膜を震わせた。それは鈴、と表現するのは少しばかり低くて太い気もするが、聞いたものの心を柔らかく
見れば、洗面台らしき処から昨日と同じ出で立ちをした美少女ーー永井Aがひらひらと手を振っている。
「ど、うして此処にAちゃんが!?」
「此処、武装探偵社の社員寮らしくて……それで泊まる場所が無いなら敦君とーー」
瞬間、Aの話を遮ったのは敦の枕元。其処に何時の間にか置かれ、自己主張をするかのように鳴り始めた携帯電話だった。
そのけたたましく鳴り響く音に敦は「
「ーーーー」
携帯電話なんて見たことすらないのだ。当然、どの釦を押せばどうなるかなんて分かる筈がない。
そうして、あたふたする敦にAが心配そうに後ろから覗き込んできた。
ーー顔が、近い。近すぎる。自分じゃ見えないけれど屹度今、敦の顔は真っ赤に染まっているだろう。
「「ーーあ」」
と、そこで通話拒否の釦を押してしまったのか、携帯電話は自己主張をやめ、五月蝿いあの音は止まってしまった。
辺りには静けさが戻り、軽やかな鳥のさえずりが人間達に朝だということを知らせてくれている。だがーー、
「ぇ、ぁ……どうしよう!?切れちゃった!?Aちゃん!」
「敦君、大丈夫だから落ち着いてーーそれ、一寸借りてもいい?」
「え……う、ん」
敦は鳥の合唱に耳を貸すことなく応じられるがままにAに携帯を差し出す。
彼女はそれを受け取ると、何処か慣れた手つきで指を動かし始めた。
カチカチと携帯電話という楽器を通してのAの演奏と鳥の合唱とが重なって、未だ敦の中に少し残っていた眠気が霧散していった。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時