三十四話/特異点とは ページ34
「ふぅん。Aちゃんの手が虎のものに、ね」
Aの語った記憶に太宰はそう云って目を細めた。
その様子にさしもの天才的頭脳の持ち主も此れには頭を悩ませるか、とAが半ば諦めの境地にいると、
「それは……うん。特異点だね」
「特異点?」
簡略的に云えば、特異点とは常識が全く通用しない、特別な点を意味する言葉だ。
その現象が、異能力にも何か関係しているのか。初耳なので、詳しくは判らない。
そうして頭を捻る少女に太宰は「そう」と言葉を続ける。
「異能の特異点。其れは複数の異能現象が干渉し合った結果、元のどれとも違う、より高次の異能現象に発展する事象のことだ」
「成程」
太宰の説明に頷き、Aは一定の理解度を示した。
だがーー、
「でも、若し特異点が太宰さんの説明通りの事象なら、色々なところで特異点が発生して大変な事になりませんか?」
そう。異能者は多い訳では無いが少ない訳でもない。
異能者同士の戦いも頻繁にとは云わずともあるにはあるだろう。
そして、その戦いの都度特異点が生まれ、『より高次の異能現象に発展』するのだから、地球に大穴が少なくとも百は空いていないと可笑しい。
それに太宰が『人間失格』で敦の異能に干渉した際も特異点は発生していなかった。
何故だ。発動手順でもあるのか。
「ーーーー」
そうして頭を悩ませるAに太宰は目を細めて、
「まぁ、落ち着き給えよ。此の話には
「ーーーー」
「極めて異質な異能現象、特異点。その最も簡単な発動手順は『矛盾する異能をぶつける』というものなのだよ。例えばーーそう、『未来を読む』異能者同士を戦わせる、とかね」
そこで、太宰の云いたいことを何となく察したAは「つまり」と彼の言葉を引き取り、
「簡単とはいえ発動手順が必要、ということはそんなに頻繁に起こる事象じゃないんですね」
「その通り。
「なら、何故私と敦君の異能がぶつかって、その矛盾型特異点が?ーー否、抑々私と敦君の異能はぶつかってさえいません。敦君が虎に変身している所を見たことすらなかったですし……」
話を聞くほどに増える疑問。それがAの瞼を重くさせていく気がした。
三十五話/腑に落ちないのですが→←三十三話/偶には寄り掛かるのも大事
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時