三十話/全てお見通しだったんですね ページ30
「経営が傾いたのなら一人二人追放したところでどうにもならない。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」
一語一句違わず倉庫内で敦に云い放った言葉を口にする太宰。その瞳は目の前の少女を決して逃がすまいと鋭く細められている。
「此れは君にも当て嵌るのだよ。Aちゃん」
「ーーーー」
「とは云えAちゃんの云う通り、敦君に追い掛けられている最中に君が異能力を使用していなかったのは事実だ。異能力無効化の私が触れても動揺も何もしていなかったからね」
「ーーーー」
「ということはAちゃんの有する異能力は戦闘向きのものではないのだろう」
「ーーーー」
「それにその服。何故敦君と同じ孤児院の出にも関わらず、金銭も十分に確保できていない筈の状況で高級な素材を使用している外套を所有しているのか。答えは簡単ーー盗んだからだ」
「……随分とはっきり云い切るんですね。何故、そう思うんですか?」
ここで、今迄沈黙を守っていたAが口を開く。それを受け、太宰は片目を瞑って云った。
「これも答えは簡単だよ。Aちゃん、君は国木田君の奢りの茶漬けを二杯しか食べていなかったよね。敦君と同じで何も食していない空腹の状態の筈なのにだ」
「ーーーー」
「此れには流石の私もおや、と思ったよ。若しかしたら誰かから金銭を受け取ってそれで空腹を凌いでいたのかもしれない。そのついでに外套も買って貰っちゃった、なんて云う可能性が浮上してくるからね」
身振り手振り交えて云う太宰にAは自身の長い睫毛に縁取られた黒紫の瞳を伏せた。
「それで実は敦君が虎に変身したときにこっそり
云われてみれば、虎になった敦に視線を奪われていた時に、腰の辺りを太宰に触られていた気がする。
彼はその時のことを話しているのだ。
「私が今日、渡されたお金を全部使い切った可能性もあるじゃないですか」
「その可用性も勿論考えはしたさ。でも、それならAちゃんは今日、手持ちの金銭全てを使い切って切羽詰まった状況の筈だ」
「ーーーー」
「だのに私達に助けを求めるどころかその素振りすらも見せなかった。ーーつまり、金銭を必要としなくても食料は確保できる、と云う事だ」
落ち着いた声音とは裏腹に必死に自身の異能力を隠し通そうとするAの声を遮って太宰は薄く笑った。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時