二十九話/襲うつもりですか? ページ29
「あの、私もう寝たいのですけど…」
敦を探して走り回った二週間。
それ程の時間があれば地面と友達になれる。とはいえ、矢張り蒲団と比べると寝心地は天と地の差がある。ーーだから、早く隣の少年のように眠りたい。
なのに、
「何時まで其処に居るんですか……太宰さん」
頭上でAを見つめる太宰の視線が気になって眠れない。皆は敦とAを見送って
「そうだねぇ。Aちゃんがちゃんと眠れるまで、かな」
嘘だ。口から息を吐くように嘘をつくのだ。この男は。
「ーーーー」
聞いた女が揃って腰砕けになるような台詞を云う太宰をAは無言で見つめ返した。
残念ながらその類の口説き文句はAには通用しない。
ーー否、他の男からなら喜んで通用されてあげるのだが、此の男は台詞も行動も何処か薄っぺらい感じがしてどうにも気に食わないが故に通用されてあげたくないのだ。
それはこの男の発する言葉全てが一から十まで全て作り物の感じがするからに他ならない。Aには判る。判ってしまう。
そんなAの何か云いたげな視線に太宰は肩を竦めた。それから、先程迄の軽薄そうな雰囲気を消して、
「やれやれ参ったね。どうやら君は此の類の余興は好まないらしい。……それならば此方も単刀直入に聞かせてもらうけど」
「ーーーー」
「君は異能力者なのかい?」
「ーー。そんな訳無いじゃないですか。若し私が……その異能力者?だとしたら敦君から逃げる時に異能力とやらを使ってますから」
知っていた。判っていた。太宰が気づいていることを。
それでも、若しそうだったとしても、唯の勘違いと云う事で隠し通せると思っていた。
ーー少なくとも此の時迄は。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時