56話 ページ9
柳は悠馬にバディマイクを手渡した。
夢マイクにはハートマイクとバディマイクがあり、柳の説明によるとハートが主役でバディが脇役のようなものらしかった。
何よりも大事なのはユニゾンで、2人の間に心の不和が生じれば、本人達も観客も悪夢にうなされるとのこと。
悠馬は少し緊張気味にマイクを受け取ると、装着した。
「……へぇ。」
周りの景色が一瞬にして変わる。
ファンシーな部屋の中にパジャマ姿の柳と悠馬が現れる。
垢抜けた姿になった悠馬は柳に誘導されるように綺麗な歌を歌う。
(ふーん…意外といいペアじゃん。)
Aがライブに見入っていると、突然孝臣が彼女の肩にもたれるようにして手を置いた。
「!…孝臣?」
「悪い……ちょっともたれさせろ。」
「い、いいけど大丈夫!?」
孝臣は怠そうにAの肩にもたれかかる。
Aがオロオロとしていると、いつの間にかライブは終わっていた。
「ゆーまぴっ!すっごかった〜!」
「望月君、先日言ったことは取り消そう。俺は君を見直した。素晴らしいライブだった。あれこそまさに一流だ。」
「うんうん!本当に凄かったわ悠馬君!」
「良かったね、悠馬。」
「…はい!」
千里達がはしゃいでいるのを無視して、Aは孝臣の顔を心配そうに覗き込む。
「…………。」
「孝臣…。」
「ん?どしたの?なんかお前顔色悪いぞ。」
孝臣の様子に気づいた千里は、A達の元へ近づく。
「うるせぇ。今構うな。」
「何だよそれ!せっかくゆまぴ達のお陰でいい気分なのに!」
「おい千里、孝臣が構うなっつってんだ。あっち行ってろ。」
「あーいいねー。いつもいつもAちゃんが守ってくれて。」
千里はふてくされたように悠馬達の元へ戻っていく。
「ふん、兎ごときが孝臣に噛みつくんじゃねぇ。」
「……………。」
しばらくすると入学式の時にいた綺麗な女の人が現れる。
三毛門紫音と名乗ったその女性は、藤次のパートナーだった。
「藤次のパートナー…女、だと。女と同室…?特例…?え、Aと孝臣は…?」
「静かに…しろ……。」
「あぁっ…!!ごめん孝臣…!!」
Aは黙ると、孝臣の背中をさすった。
その時、紫音と藤次がステージに上がる。
どうやら次はその2人の夢ライブが始まるようだった。
「うわ〜っ!!たっのしみ!ゆまぴの時も最高だったし、今度はどんなライブになるんだろ!」
「…うるせぇ。」
「お前ほんっとノリ悪いなぁ…。」
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月18日 15時