59話 ページ12
「はぁーっ、サッと済ませるために入ったラーメン屋だったが、当たりだったな。美味かった…。今度孝臣とも来よう!」
昼ご飯を済ませたAは、寮へと向かっていた。
「にしても、薬局で時間取りすぎたな。新しい化粧品が出るたびにチェックして長居してしまう癖は直さないと…。」
Aは予定外の量の荷物になっている薬局の袋を見つめ小さく溜息を吐く。
その時、Aは視界の端で何かを捉える。
「…ッ!!今のは…。」
校舎の陰になっている草むらに、荷物を置いてAはしゃがみ込む。
「んナ〜ォ。」
「!!!」
木陰から現れたのは小さな野良猫だった。
「…っ!!」
Aは周りを見渡し誰もいないのを確認すると、猫の鳴き真似をした。
「なーお。」
「ナァ〜ォ。」
「にゃ〜お。」
「ニァーン。」
「にゃーん。」
警戒を解いた野良猫はAに擦り寄る。
「!!…ふふっ、お前可愛い奴だな。」
「ニァ〜!」
「はは…っ、こら、くすぐってぇぞ。」
Aが猫と戯れていると、突然足音がした。
「!!?」
「ニャ?」
「へぇ、そんな可愛いとこあったんだ。意外な一面。」
そこに現れたのは、先日夢ライブでユニゾンを失敗した紫音だった。
「お前…紫音…っつったか。」
「うん、そうだよ。A…って、呼べばいいかな?」
Aは猫を離すと、紫音を睨みつける。
「今見たことは忘れろ…。」
「ふふ、威嚇してる猫ちゃんみたいで可愛いね。でも残念。もう写真撮っちゃった。」
「なっ!?今すぐ消せ!!じゃねぇとお前のスマホ取り上げてぶっ壊すぞ!!」
「そんなことしたら、今見たこと獅子丸孝臣にバラしちゃおうかな。」
Aは顔が青ざめる。
「そ、れだけは…やめろ!!」
「どうして?」
「孝臣を守るはずのAが、そんな腑抜けであっていいはずがないだろ!!」
「あっは、本当に大好きなんだね、彼のこと。」
「当然だ!!」
紫音はクスリと笑うと、Aに近づき頰を撫でる。
「!?何するんだ!!」
「綺麗な顔…。ねぇ、バラされたくなかったら、今後私の言うこと聞いてくれる?」
「なっ!?お前…脅す気か!」
「別に。時々私の着せ替え人形になってもらいたいだけだよ。」
「は…?着せ替え…人形?」
すると紫音は、突然自身の髪を持ち上げるようにして掴み出した。
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月18日 15時