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それからシャワーを浴びて、私は屋上に出た。暗闇の中で星々はひとつひとつ輝いていた。私は今までこの無数に広がる星のどこかにいたのかもしれない。
夜風に当たっていると、ガチャリと屋上のドアの開く音がした。
「A、ここにいると思ったよ」
「見えてたんでしょ」
ドアを開けたのは迅だった。
迅は私の隣に立ち、そのままフェンスに体重を掛けて2人並んで空を見上げた。
「こんな風に空を見上げるとさ、思い出すんだ」
川の上を流れるように、冷たい風がふっと体を突き抜ける。迅の声は、その風に乗って私の耳に静かに届いていた。
「この無数にある星のどこかにAがいるのかなって」
私に柔らかな瞳を向けて、迅は静かに微笑んだ。
「ここに見えない星かもしれない。天文学的な数値だけど、それでもこの宇宙のどこかにAがいる……見上げるたびにそう思ってたよ」
「本当に戻ってきてくれてありがとう」
迅との付き合いは長い。旧ボーダーの中でも一番仲が良かったのは迅だった。それは同い年だからというものも大きかったのかもしれない。迅がこんな風に素直に人に感謝を述べたことは長い付き合いの中でも珍しいことだと思った。
「迅がそんな風に言うなんて珍しいね」
「俺だってたまにはありがとうっていうよ」
柔らかな風が吹き抜ける。見上げた空は無限に拡がっている。今はもう、この宇宙に私はいない。ここに、存在している。
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鏡 - なぎささん» なぎささんコメントありがとうございます!好きと言って頂けるだけでありがたいのに5回も読み直して頂けるなんて恐縮です…!本当に本当にありがとうございます!嬉しすぎて泣きそうです…不定期更新でご迷惑お掛けしますがこれからも頑張りますね! (2022年10月1日 20時) (レス) @page49 id: 79e67df0bc (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 更新ありがとうございます!この小説が好きすぎて5回は読み直しました...これからも応援しております🥳ご無理のない程度に頑張ってください! (2022年9月30日 20時) (レス) @page48 id: 0fe7f18098 (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - 璃々さん» コメントありがとうございます!手探りで進めているようなお話ですが面白いと言って頂けて本当に嬉しいです!続きも待ってくださるなんて本当に嬉しすぎて転げ回っております…本当に励みになりました!不定期更新で申し訳ないですがこれからも更新頑張りますね! (2022年7月30日 0時) (レス) id: e6b083c4a6 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - コメント失礼します!近界から帰ってくるっていう新しいタイプのお話ですごく面白いです!!!夢主の実力がどのくらいかとかほんとに気になって仕方ないです…続き楽しみに待ってます!頑張ってください!!! (2022年7月29日 19時) (レス) @page31 id: e950c5fcca (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - ゆん。さん» コメントありがとうございます!世界観にハマるだなんてとてもとても嬉しいお言葉ありがとうございます!私もゆん。様のお言葉に励まされ飛び上がって喜んでおります…!これからもちょこちょこ更新しますのでどうぞよろしくお願い致します! (2022年7月15日 12時) (レス) id: d84ec32568 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鏡 | 作成日時:2022年6月30日 2時