１０.いつだって人を幸せにするのは、平穏である ページ10
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よっこいしょ、とおよそまだ20代前半の女性が出すべきではないおっさんじみた掛け声と共に、袋を反対側の肩に掛け直す。同じ年代の女性と比べて、だいぶ華奢な身体つきをしている都は残念なことに撫で肩。
本当になんでお前その体格で撫で肩なんだ、と突っ込みたくなるくらいだ。
よって、何度掛け直しても袋はずり落ちる。
段々そのやりとりに根をあげた都は、手からぶら下げた状態で歩き出す。そっちの方が手にかかる負担が尋常ではないが、無駄なやり取りをするよりかは効率的だろう。
どこにでもあるビニールが手に深く食い込む。正直痛いが、この程度の痛みならとっくに慣れているので何ともない。
あとはこのまま何事もなく店へ戻るだけ――けれどフラグはこういう時こそ回収されるものだった。
「――すみません、五月女 都さんでしょうか？」
背後からかかる声に、思わずばっと振り返る。遠慮がちに、しかし礼儀正しく話しかけて来た相手は、その穏やかな声色とは裏腹に色素の薄い金の髪を丁寧に撫で付けたスーツの男だった。
____何故名前を知っているのだろうか、そう思ったと同時に何だか一つの仮説が立てられてしまって、身構えた。…彼等の、仲間である可能性だ。
けれどそんな不安も杞憂に終わった。
「僕、山下と申します。
貴女の働く喫茶店のオーナーには、大変お世話になりまして……実は、この度僕も自分の店を開業させて頂くことになり、その時にオーナーには何度もご尽力して頂いたので、その御礼をと、オーナーの元へ参りたいのですが…」
「実は地図を忘れた挙句……携帯も家に置いてきてしまうという恥ずかしい失態をしてしまいまして。案内して頂けないかと。」控えめに、恥ずかしそうに笑う山下という男に嘘をついている様子はない気がする____多分。
『別に結構ですけど…何故私の事を？』
「ああ！オーナーから何度か話を聞いているんです、とても優秀な店員が入ってくれた、と。」
『オーナーが？』
優秀。それは最も自分とはかけ離れた言葉だ。
黙った都に不審感も何も感じないのか、山下は少し強引に「よろしくお願いします」と行動を促した。
ここまで来てしまったら断り理由はないし、何よりオーナーの名前を出されて仕舞えば、疑うのは失礼に値するだろう――オーナーへ。
別に向かう方向は同じなのだから、構わないだろう、と楽観的に考えてしまったのである。
それが、平穏を崩す最大の事件になると気付かないまま。
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雪原(プロフ) - ふぃおさん» 申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。修正しました！ (2017年12月22日 22時) (
レス) id: b79552e05e (このIDを非表示/違反報告)
ふぃお(プロフ) - 26話辺りから名前変換出来ていませんよ〜 (2017年12月22日 22時) (レス) id: 86fe828a4e (このIDを非表示/違反報告)
リオ - 設定から書き方までツボ過ぎてやばいっすわｗ続きがくっそきになるので更新頑張ってください!! (2017年9月18日 20時) (レス) id: 0dc7e3ba93 (このIDを非表示/違反報告)
雪原(プロフ) - すりぴいさん» コメントありがとうございます。稚拙な文章ですが、そう言って頂けて大変嬉しいです！不定期になるかとは思いますが、精一杯頑張ります…！ (2017年9月18日 20時) (レス) id: 4141bf49c5 (このIDを非表示/違反報告)
すりぴい - ﾝﾝﾝﾝｯ！！好きです。更新頑張って下さい! (2017年9月18日 19時) (レス) id: 796ae87385 (このIDを非表示/違反報告)
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