４１.震える快感と、乾杯の音頭 ページ41
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「――オスマン。」
「あ、遅いめう〜もう全部吐き終わった後やで、トントン。」
やけに頑丈な鋼鉄製の扉は、捕虜が暴れたり逃げ出そうとした時の為のものであり、幾ら鍛えているとはいえ成人男性一人の力でも些かキツいものがある代物であった。男____オスマンの名を呼んだトントンの後ろからは、珍しく眼鏡をかけたコネシマがうつらうつらと船を漕ぎながらも、器用に寝惚け眼でのっそりと現れる。その光景にくすりと可笑しさを堪えきれずにオスマンは笑った。
「流石やな、というか相変わらずえっぐい‥‥報告終わったら直ぐにその赤、洗い流した方がええで」
「勿論。いやあ、今回は割と長期戦やったんやで？この子、結構強情でなあ」
「な、山下君」語尾にハートマークがつきそうな程、高揚したオスマンの声に今までずっと黙っていた山下が小さく呻く。だらだらと流す血と傷を見て、長くは保たないだろうと察する事は出来たが、当の山下は顔を持ち上げうっとりとオスマンを見上げたのだ。
「た、たすけて_____おすまんさん、おれ、ぜんぶ話したからぁ‥‥っ、」
「うんうん、せやな。ええ子やったで、山下君。」
幼子のように縋り付く山下にトントンは遠慮なく顔をひきつらせる。えぐい、トントンの言っていた意味はこういう事だったのである。
組織の交渉人――そう謳われる程に、他者とのコミュニケーション、ないしは交渉に一定以上の評価を受けるオスマンは、時たまこうして捕虜から情報を聞き出す役目を請け負う事があった。話術に秀でた彼の手にかかれば、情報を吐かない者など存在しない。しかしその手段が、どうにもえげつないもので。
涙をぼろぼろと垂れ流す山下の表情は、言ってしまうと悪いが非常に醜いものだ。人はあまりに辛い事があると、自分を守る為に幼児退行すると聞いた事があるが、山下は今まさにそんな状態だった。
容赦のない言葉攻めと、今まで何度も受けてきた暴力の数々____そしてそれを救済せんとするまさに天の一声の如きオスマンの言葉。意地も理性も投げ捨て縋り付きたくなる気持ちは、敵ながらよくわかる。
トントンはため息を吐きながら、「ほらさっさと報告いくで。これからの計画を練らなあかんから。」声をかけると、オスマンは素直に頷き「ああ、ちょっと待ってくれへん？」懐から何かを取り出した。
「約束やしな。ええ子にはご褒美あげんと。」
「おすまんさ、っ」
黒光りするそれは残酷な音を奏で、人の生命を無情に断つ手段である。
幸せに歪んだ山下の額を撃ち抜いたオスマンの顔は、無表情だった。
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雪原(プロフ) - ふぃおさん» 申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。修正しました！ (2017年12月22日 22時) (
レス) id: b79552e05e (このIDを非表示/違反報告)
ふぃお(プロフ) - 26話辺りから名前変換出来ていませんよ〜 (2017年12月22日 22時) (レス) id: 86fe828a4e (このIDを非表示/違反報告)
リオ - 設定から書き方までツボ過ぎてやばいっすわｗ続きがくっそきになるので更新頑張ってください!! (2017年9月18日 20時) (レス) id: 0dc7e3ba93 (このIDを非表示/違反報告)
雪原(プロフ) - すりぴいさん» コメントありがとうございます。稚拙な文章ですが、そう言って頂けて大変嬉しいです！不定期になるかとは思いますが、精一杯頑張ります…！ (2017年9月18日 20時) (レス) id: 4141bf49c5 (このIDを非表示/違反報告)
すりぴい - ﾝﾝﾝﾝｯ！！好きです。更新頑張って下さい! (2017年9月18日 19時) (レス) id: 796ae87385 (このIDを非表示/違反報告)
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