【wrwrd!】 履歴書なんて、ぶち破れ！

４.いつだって人を幸せにするのは、平穏である ページ4

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かつん、と脳に直接響くような革靴の反響音と、ハンマーで殴られているような鈍痛に、男は目を覚ました。
自分の状況を理解しようと身体を動かそうと試みるが、それは背後でなる鎖の擦れる音と頑丈なそれに、叶うことはなかった。固いコンクリートに目を向けると、恐らく自分のものであろう赤黒い染みが水溜りのように点々と存在している。

「お、やっと目覚ましたか、裏切り者(・・・・)の城ヶ崎君。」
「ッ…お前は、」
「あぁ俺のこと知らなくてもええんやで。
どうせお前、」


――すぐに死ぬんやから。


ひゅ、っと男の喉が音を立てる。
目の前で男を見下ろすのは、深緑色のパーカーを目深に被った体格の良い男。手には使い慣れたと察せられるサバイバルナイフがあり、それを軽やかに踊らせていた。

「し、知ってるぞ俺はお前のことを！
組織の工作員の____あぁ確かゾムだ！そうだろう！？」
「いやだからそんなん無意味やって言ったやろ、ホンマ間抜けやなあんた」

表情を覆い隠すようにして深く被られたフードの隙間から、殺意に満ち溢れ、爛々と狂気に揺れる天鵞絨の瞳が見え隠れする。


「組織(うち)の情報をごっそり抜き取って、近頃ここらを荒らし回ってる犯罪者集団に横流しして莫大な金を手に入れてたらしいなぁ？

そんなに組織の収入じゃ物足りんかったか、欲が出たか…まぁどっちにしろ、裏切り者は死ぬルールやしな。あんたも一度は組織に加入した身___覚悟はしてたやろ？な？」


「いやぁこんなワクワクする仕事増やしてくれてありがたいわ」興奮からか、上ずる声で口角を吊り上げる。言葉を紡ぐごとに、どんどん早口になる様子から、早くこの男を殺したくて仕方ないという感情が丸わかりである。
頰を紅潮させていくゾムとは違い、男の顔色は可哀想なくらいブルーだ。懺悔する子羊のように震えている。

鋭い切っ先が、男の喉元に突きつけられる。少しでも動けば、直ぐに喉は貫かれ鮮血が飛び散るだろう。

今や処刑台に首をかけたも同然の男は、震える口で最後の足掻きだと言わんばかりに、精一杯の恨み辛みを吐き捨てた。


「――正義の味方気取りの人殺し共が…ッ！
幾ら犯罪者を殺した所で、絶対に正義には成り得ない！精々、驕って」


最後まで紡がれることなく、首は搔き切られた。




「別に正義になりたくてやっとるんやないで。
いつだって人間を動かす根本には、娯楽があるやろ、これは俺にとっての天職やねん。」






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